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2011年3月 9日 (水)

ダメージ・コントロール : 運動と血糖調節4

えいりあん・めもらんだむ

 運動で血糖値が上がる。
 いくらハードな無酸素運動をやったといっても、未だ境界型でインスリン感受性は抜群に良いと言われている身体にもかかわらず、血糖値が上がる。それも、少々の糖質を食べて上がる場合より、よほど急峻なグルコース・スパイクだって出せる。

 ・・・これはショックだったわよ。
 
 まあ私はIGT(耐糖能異常)だからそういうことも起こり得るとしても、耐糖能正常な陸上選手が朝食前の長距離ランニングで糖新生させたら、食後より高い血糖値になったというデータ(→過去記事:アドレナリン・ハイで紹介)には、さらにショックを受けたわよ。

 私の例では、加圧+ウエイトトレーニングで血糖値を上げたのは、グルカゴンと成長ホルモンとアドレナリンだった。これに対して、血糖値を下げるホルモンは、インスリン・・・だけ

 もちろん、運動時の筋収縮で細胞表面に出てきたGlut4によるインスリン非依存的な血糖取り込みで下がる分もある。私にできる筋力トレーニングの強度なんて実はたいしたことなくて、無酸素運動と呼ぶには恥ずかしいレベルだから、このメカニズムもきっと働いているはず。加圧トレのエクササイズが5種目、各75回の筋収縮。その後の筋トレは種目により30回とか45回とか60回の筋収縮で、6種目。もっと軽負荷・高回数のグループ・エクササイズで血糖取り込みできる事前摂取カーボ量25 g相当の、半分~2/3は取り込める運動だというのが、私の実感なんだけれどなあ・・・。

 しかし、今は運動による筋肉への取り込み分はちょっと脇に置いておいて、ホルモン作用について考えてみよう。

長文注意報! 興味とお時間のある方は、お進みください。

 

 グルカゴン+成長ホルモン+アドレナリンの連合軍 vs. インスリン単独軍

 インスリンが孤軍奮闘するのは食後も同じ・・・ではないのよね。

 食後のインスリン分泌には二通りの機序がある。血糖値の上昇を感知したβ細胞がインスリンを放出するだけでなく、その前に、食物摂取の刺激を受けた小腸のK細胞やL細胞から分泌されたインクレチンが膵臓のβ細胞に働きかけてインスリン分泌を促すという作用がある。
 つまり、食後のインスリン追加分泌には、インクレチンに後押しされた分があるわけ。というか、こちらのほうが多いとも言われている。 

 では、運動中に血糖値が上がった場合は・・・
 小腸は関係ないわよね。よって、インクレチン作用はなし。血液中のグルコース濃度の上昇をβ細胞が感知して分泌する追加インスリンだけ。

 しかし、もともと私のβ細胞は、昼間はのろのろとわずかの追加分泌しか出せないことだし、運動前に追加分泌させておこうと目論んでタイミングがずれて大失敗した経験もある(→過去記事:グルコース・シナジー)から、追加インスリンをあてにするのは危険すぎる。

 そうすると自軍はインスリン基礎分泌だけ。グルカゴン+成長ホルモン+アドレナリン連合軍相手に勝ち目があるわけがない。
 勝たなくてもいいのだけれど・・・、負けさえしなければ。と思っても、正常範囲下限以下の私の基礎インスリンでは、無理。

 それで目標設定は、大敗を喫しないこと。ダメージが許容範囲内におさまれば、それでいい。

 正規軍(インスリン基礎分泌)は弱小、後方支援(インスリン追加分泌)には頼れない、そして援軍(インクレチン)は来ない。

 ・・・それでどうやって戦うのかって・・・

 事前に特殊部隊を送り込んで、敵連合軍の一角を崩しておくのよ♪

 成長ホルモンは血糖上昇に関しては雑魚だし、そもそもこのホルモンを分泌させるためにトレーニングしているようなものだから、これは出て来てくれていい。
 アドレナリンは・・・手のうちようがない。でも、これは敵軍にとっても最終兵器みたいなもので、何発も出て来るわけではないから、ダメージが限局されていることを祈って放置。
 というわけで、ターゲットは敵主力軍のグルカゴン。これの分泌を抑え込んでおけば、筋収縮に伴って細胞表面に出て来たGlut4によるインスリン非依存的血糖取り込み作用分をカウントできる・・・はずだと信じる。

 まず、敵を知ろう。
 本日現在の日本語wikipediaによると、

グルカゴンの分泌は低血糖により促進され、高血糖により抑制される。遊離脂肪酸によっても抑制され、アルギニンなどのアミノ酸によって刺激される。

ですって。グルカゴンを抑制するには、血糖値を上げるか、血中遊離脂肪酸を増やすか。
 遊離脂肪酸を増やす方法といえば、長時間の有酸素運動で身体を脂肪分解モードに入れておくことが真っ先に思い浮かぶけれど、加圧トレーニングの前にこれをやるわけにはいかない。成長ホルモン分泌を抑制してしまうから。
 とすると、武器はグルコースしかない。毒を以って毒を制す。・・・危険だけれど。

 高血糖により抑制される、というけれど、血糖値を上げれば上げるほど良いわけではないだろう?

 さらに、情報戦。
 血糖値に対するグルカゴン分泌のグラフ。月刊糖尿病の去年の6月号で見つけた。無料で読める公開ページに載っていた図を拝借。

Glucagon_vs_bg
 グルカゴン分泌は、血糖値5 mM = 90 mg/dlで極小。これより血糖値が上がると、分泌は再び亢進する。(でも、それを上回るインスリン分泌が、上がった血糖値を下げる・・・正常者では。)

 どういう条件でこのデータが取られたのか知りたくて、オリジナル文献(Rorsman P. et al., Trends Endocrinol. Metab., 2008, 19, 277-284)を探したが、無料で読めるアブストラクトでは実験条件まではわからなかった。著者の公式ホームページ@大学へ行ったら、ちょうど原図(著者のページへ行って図をクリックすると、もっと大きくきれいに見ることができます)が紹介されていたけれど、やはりどういう条件で得られたデータなのかはわからない。まさか、マウスのデータってことはないと思うが。(^^;;;

Patrikrorsmanfig2

 グルカゴン分泌が極小になる血糖値が微妙に異なるのが、気になる。

 とても気になるが、1週間が経って、また加圧トレーニング・セッションの日が巡って来てしまった。見切り発車で、戦略決定。

 グルカゴンに対して送り込む刺客は、カーボ

 カーボで血糖値を90 mg/dl以上に上げておく。これは私のSMBG測定値では100 mg/dlをちょっと越えたあたりに相当。血糖値7 mMなら126 mg/dlだし、ウォーミングアップの軽い運動で取り込んでしまう分もあるから、100 mg/dlよりは高いところまで上げておくほうが確実にグルカゴンを止められそうな気がする。

 低い血糖値から、カーボで血糖値を上げて(←ここ、重要。内因性グルコースで血糖値が上がっているのでは駄目。)100 mg/dl越えにして、それをトレーニング開始時まで一定時間保っておく。(←グルカゴンが抑制された状態をある程度の時間キープしておけば、運動で血糖値が下がり始めても、すぐには出て来ないだろうと期待。)

 さあ、この戦略で敵主力軍(=グルカゴン)の勢力を削げるのだろうか?
 私の貧弱なインスリン基礎分泌+運動による血糖取り込みで、敵の強力兵器(=アドレナリン)の爆発を許容範囲内に凌げるだろうか?

 ああ、やっと本格的な人体実験開始前夜まで辿り着いた。・・・データは、次回に。


copyright (c) 2011- えいりあん
 転載厳禁。引用の際は、ブログ「血糖を管理する日々」に言及の上、リンクを張ってください。

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コメント

 いや、やっぱりちゃんと化学の教科書を読まねばいけませんね……うう、眺めるだけで頭痛が(´ヘ`;)

 モル濃度wikiにある「化学においてモル濃度(モルのうど、Molar concentration)とは、濃度を表す方式の一つで、溶液1 L中の溶質をそのモル数を使って表したものである。単位は[mol/L]。化学や生化学などでよく用いられる濃度表示法であるが、ほとんどの溶液の体積が熱膨張の影響で温度に依存するため熱力学では使われにくい。しかし、この問題は温度補正係数や重量モル濃度など温度が影響しない方法をとることにより解決される」ってことなんでしょうが、濃度wikiにあるモル濃度の説明の方がもうちょっとマシかしら。
 いずれにしろ、血糖値mg/dl互換ってことで一安心。
 で、ちょっと疑問。

>グルカゴン分泌は、血糖値5 mM = 90 mg/dlで極小。
>これより血糖値が上がると、分泌は再び亢進する。

 血糖値が増加状態だってのに、なんだってグルカゴンが、さらなるお邪魔虫するのか? 帰れ、帰れ! 
 思い込んでいたイメージとちょっと違います。しかも、元のデータが、上昇傾向だけど、途中までしかないってのも引っかかる。
 血糖濃度ではなく、インスリン濃度に反応してるっていうなら、しょうがないとあきらめもつくんだけど。
 インクレチンの糖新生抑制機序もそんな関係だったような……うう、ちゃんと読まねば(´ヘ`;)
 
 この辺、インスリン呼び水作戦ともからみますよね? 
 ま、ま、戦闘結果を待ちましょう。

投稿: YCAT | 2011年3月10日 (木) 00:57

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