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2011年1月16日 (日)

アドレナリン・ハイ : 運動と血糖調節1

えいりあん・めもらんだむ

 先月、運動だけで186 mg/dlという血糖値を叩き出した。

 以来、運動メニューと、運動前後のどのタイミングで何をどれだけ食べるか、によって血糖値がどう推移するか、データを取りなおしている。
 過去の人体実験系記事は、一通りデータが集まってから書いていたのだけれど、今回の実験はいつまでかかるかわからないので、現在進行形で書いてみることにした。すでに何度か実験に失敗もしているし、結論は出ないかもしれないのだが・・・。

 長くなるけれど、そもそもの発端から書こう。

長文注意報! 興味とお時間のある方は、お進みくだ さい。

 

 6月からトラブル続きだった肘がようやく使えるようになったので、トレーニングメニューを変えることになった。

 ちなみに、肘のトラブルとは、右の上腕骨外側上顆炎から始まり(過去記事→ロコモーション)、右手の代わりにできるだけ左手を使っていたら左肘の上腕骨内側上顆炎を起こし、さらに肘に負担をかけないように腕全体を使って草むしりしたら右肘の上腕三頭筋付着部炎になった、という経過を辿ったもの。
 新しい痛みが起こるたびに私は泣きそうになったが、かかりつけの柔整師さんは、2回目と3回目の時は「ああ、炎症を起こしてますね」というだけで、淡々と施術してくれた。というのも、最初の上腕骨外側上顆炎は故障してから治療に入るまでに1ヶ月近く経っていて、骨が一部ぼこっと飛び出していたが、後から起きた故障はすぐ診てもらったので炎症さえおさまれば治る状態だったからだろう。(骨って意外と短期間で変形する。歯の治療中に片噛みになったときも3週間ほどで歯槽骨が部分的に飛び出して来て、噛みかたを矯正したら元に戻ったし。)

 で、トレーナーさんは、肘を傷めて落ちてしまった握力を戻すために前腕のトレーニングを入れようか、と言う。柔整師さんは、年を取ってから末端の筋肉を鍛えて強くしてしまうと、その筋肉の付着部の骨が防衛反応として変形するからやってはいけない、と言う。

「若いうちは筋肉をいくら強くしても、骨はそういう反応をしないんですよ。でも、もう年なんだから、だめ。年取ってから鍛えるなら、体幹の筋肉だけ。右肘の骨だって、あれだけ飛び出していたから、本当は骨棘になって少し残るかと思っていたんですよ。いやー、すっかり元に戻りましたね♪」
「ねーねー、それって私の身体が若いってことじゃない?」
「・・・冗談はやめましょう・・・」

 というわけで、自分はいったいどういうトレーニングをしたいのか、あらためて考えてみた。

 私が運動をするのは、定期的に頭をからっぽにするため。メンヘル的にろくでもない遺伝因子をいろいろと引き継いでいるもので、ウツにもアディクションにもはまらないように無理やりにでも身体を動かすのよ。まず形から入るという方法論は、けっこう有効なのだ。(しかし、糖尿病の遺伝表現形のほうにつかまるとは予想外だった。甘かった。)

 週1回の水泳から、土日祝日の筋トレに変えたのは、ちょうど3年前。
 常に疲労感が抜けない、食事も運動も変えていないのに勝手に太ってきた、動作が鈍くなったのが自分でもわかる、加えて突然皮膚の乾燥がひどくなってプールに入れなくなってしまった、からだった。後にこれらは総て甲状腺機能低下の症状だったと判明するのだが、当時の私は加齢のせいだと信じていた。
 筋トレに期待したのは、動くときの身体のキレを良くすること。
 つまり体幹の筋肉を鍛えて骨盤を安定させ、脊柱の軸がきちっと通った姿勢を作ろうと思った。

 甲状腺機能低下症状がおさまっても筋トレのほうを継続したのは、このトシになってもまだ強くなれるということが楽しいから、という単純な理由なんだけれどね。

 ともかく、血糖値を下げようと思って始めたことではない。
 血糖リザーバとしての筋肉量を増やしたい、という希望が加わったのは、その年の秋に耐糖能異常(IGT)であるとわかって以降のこと。

 つまり、体幹と下肢の大きな筋肉を鍛えられれば、それでいいのよ。
 腸腰筋・腹筋・脊柱起立筋群・大胸筋・広背筋・僧房筋、大腿四頭筋・ハムストリングス・大臀筋。
 いちばん弱い腹筋を重点的に。

 上腕の筋肉は、トレーニングすると明らかに形が変わるので、それが面白くてやっていたのだけれど、限られたパーソナル・トレーニングの時間をわざわざ使うほどのことでもない。まして、繰り返しやすいという上腕骨上顆炎の再発リスクを抱えてまでやらなくてはならないことだとは全然思わない。
 まあ、加圧トレーニングは、肘が故障していてもできる軽負荷で効果があることだし、成長ホルモン分泌の促進効果に期待して、加圧での上肢トレーニングは続けてもいいけれど。

「上腕二頭筋や三頭筋は、捨ててもいい。まして前腕は要らない」
と加圧トレーニングのトレーナーさんに宣言して、自分が耐糖能異常であることをカミングアウトした。
 私の希望が、筋力増大でも筋持久力養成でもなく筋肥大であることは最初から言ってあったのだけれど、その理由が血糖リザーバの拡大であることを、はじめて説明した。
「上腕の筋肉を10%増やすより、大腿四頭筋と大臀筋を1%増やすほうが楽だし得なんだから!」

 トレーナーさんは耐糖能異常(IGT)なんて単語は知らなかったから、私は境界型とか糖尿病予備軍と呼ばれる範疇なのだというところから、説明する。インスリン抵抗性についてはご存知だったので、私の場合はむしろインスリン感受性は高くて、インスリン分泌量が普通の人に比べて足りないのだという話をする。
 加圧トレーニングをすると血糖値は上がってしまう(過去記事→加圧トレーニングと血糖値(1):リスク・アセスメント(2):アンタゴニズム)のだけれど、筋肥大をさせるために、ある程度までは目をつぶってやっているのだ、とも言う。

 そうしたら・・・、運動して血糖値が上がるということを信じてもらえなかった。
 加圧トレーナーの講習では、糖尿病のトレーニーの場合は低血糖に気をつけろ、と教わったのだそうだ。
 糖尿病確定の人で主治医から筋トレの許可が出るような人は、きっと、軽症でインスリン抵抗性が主たる問題であるケースなのだと思う。そういう人は、実はインスリンはけっこう分泌されているから、トレーニングして筋肉が一気に血糖を取り込んだら、低血糖になることもあるだろう。

 でもインスリン分泌不足は、違う病態なのよ。

 かくして、やって見せることになったわけ。

 当日の昼食のカーボ含有量は約2 g。
 トレーニング前には何も食べず(いつもの事前スイーツもなし。実験ですから・・・(;_;))、トレーニング中も水のみ。

トレーニング前
14:10  111 mg/dl

ウォーミングアップ(AMTに11分乗る)

14:28  115 mg/dl

加圧トレーニング(上肢3種目、下肢2種目)

14:54  129 mg/dl  ほら、上昇。成長ホルモンが出始めたみたいね。

体幹トレーニング(6種目、うち半分は腹筋)

15:31  186 mg/dl !!

「うわ、本当だ。上がるね~」

・・・いや、上がり過ぎ・・・(ToT)

「なんで、こんなに上がるの?」
「だから、成長ホルモンかグルカゴンかアドレナリンか。とにかくインスリン以外のホルモンは全部血糖値を上げる方向に働くのだから」

成長ホルモンの分泌ピークはもう過ぎているし・・・・・・アドレナリンだな、こりゃ」
うん、アドレナリン、よね、きっと
(ふたりとも過去30分間にやっていたことを思い描いている。)

 内心、パニック。
 血糖値を下げるために、有酸素系マシンへ。

有酸素運動(クロストレーナーを9分、AMT11分)

15:56  161 mg/dl  ・・・までしか下がらない。20分やったのに。

16:19  120 mg/dl  何もしていない。着替えただけで41 mg/dl下がる。

16:45   99 mg/dl  何もしていない。家へ帰っただけでここまで下がる。

 まあ、要するに、時間が経ってアドレナリンが引けば、すーっと下がるのよね。

 5月に事前スイーツなし、水だけの条件で加圧トレーニングを受けたときは、127 mg/dlまでしか上がらなかった。
 その時のデータを一緒にグラフ化すると、こう。
 5月のデータなんて、このスケールだと変化なしに見えるわね。

Kaatu201012

 5月頃とはトレーニング・メニューも全然違っているから、この結果は当然なのかもしれない。
 血糖値を上げているのは、加圧トレーニングよりも、その後のハードな筋力トレーニングのほうだわ。5月の段階ではこの時間帯は、加圧ではやらなかった筋肉のベーシックなトレーニングで、負荷もずっと軽かった。今は筋肥大が目的なので、加圧でパンプアップさせ乳酸も出ている部位を重い負荷をかけてもう一度やる。たまたま調子が良かったりすると1セットが終わろうという頃に「あと5回」なんて指示が飛び、それも出来てしまうと2セット目からでもウェイトを増やされる。容赦ない。アドレナリンでも出さなきゃ、やれないわよ!

 ・・・しかし、これはお医者さんには言えないなあ。

 私って、まだ境界型よ。「運動? なんでもどんどんやってくださいね。いいことです(^-^)」と言われている境界型なのよ。
 境界型の段階で、運動だけでグルコース・スパイクが出るなんて言われたら、お医者さんも困るんでないかい?

 それにしても、オールアウトするまでやっているのだから、エンケファリンやβ-エンドルフィンでも出て来て、アドレナリンの効果を打ち消してくれても良さそうなものだけれど。・・・それは無理か。筋トレやっていて、脳内麻薬が出てきて抑制を外して、延々と続けられるようになってしまったら、1日で身体壊すわよね。ニンゲンそんなふうに出来ているはずはないわね。短時間限定で抑制を外すのは、アドレナリンの仕事なのだし。

 では、アドレナリン分泌を抑制して、あるいはアドレナリンに対抗してトレーニングすることは、可能なのか? 

 そして、人体実験の日々が始まったのだ。



# 私は血糖値のためにトレーニングしているわけではないので、筋トレをすることは前提でどこまでグルコーススパイクを抑えられるか(あるいはどこまで許容するか)を見極めようと実験していますが、血糖値を下げるために運動するという方は、アドレナリンが出ない程度の強度に調節なさればよろしいかと思います。グルカゴンによる血糖値上昇は、私の経験では、アドレナリンによるものほど強力ではありません。


copyright (c) 2011- えいりあん
 転載厳禁。 引用の際は、ブログ「血糖を管理する日々」に言及の上、リンクを張ってください。

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コメント

 うわ、すげえです、えいりあんさん。
 
 上がった血糖値もさることながら、そこまでの運動は……あたしにはできませぬ。木にぶら下がっているのがせいいっぱい。

投稿: YCAT | 2011年1月17日 (月) 01:42

>YCATさん

 結局、モチヴェーションの違いなのでしょうね。

 いつか運動したくても出来なくなる時が来る。でも、今はまだ出来る。今はまだ強くなれる。だから、老後に備えてせっせと貯筋しているんですよ。

 介護付き老人ホームの入居者で、基礎疾患として糖尿病を持っている人がどれだけ多いことか・・・。


 高速歩行にせよサイクリングにせよ、YCATさんは「食べるために運動する」タイプでしょ?(運動するのが、事前でも事後でも)
 私は、(少なくともトレーニング日は)「運動するために食べる」んです。

投稿: えいりあん | 2011年1月17日 (月) 22:31

えいりあんさんこんばんわ(^-^)
トレーナーの方も驚いたでしょうに(T_T)
単一性のないのが人間の身体ですから教科書通りにはならないってことを知るのは、自分自身でも困難。ましてや第三者は言わずもがな(~ヘ~;)

しかし、アドレナリンの作用って強いんですね。危機に瀕した時に身体を動かすための動力としては優秀ですが、インスリンの分泌に見合った量に設定してほしいものです神様(~ヘ~;)

さて、私も『貯筋』頑張ろうか!!

投稿: 蝶々 | 2011年1月20日 (木) 19:59

蝶々さん、こんばんは。

 運動による血糖取り込みとグルカゴン分泌による血糖上昇分は、私の場合、だいたい釣り合わせられるみたいなのですよね。(次の記事で書く予定ですが。)

 でも、アドレナリンが乗っかると、こんなことに・・・。

 まあ、私のSMBG値は静脈血の分析値より高く出るので、SMBGで186 mg/dlと言っても静脈血では170 mg/dlかそこらのはずだから、血管内皮細胞の心配をするほどのスパイクではないのですけれどね。
(ただし、事前カーボ投入タイミングがずれて失敗した人体実験では、さらに恐ろしい数値を叩き出しました。これは次々回くらいかな? ・・・あまり期待しないように。)

 蝶々さんの場合は、きっとインスリン基礎分泌はしっかりあるでしょうから、アドレナリンにもかなりのところまで対抗できるんじゃないでしょうか? 私の基礎分泌1.5μU/mlは、日常生活はインスリン感受性でカバーできますが、ちょっとでも外乱が入るとすぐに負けてしまう少なさです。会議でエキサイトしただけでも、135 mg/dlくらいにはなりますもん。

投稿: えいりあん | 2011年1月20日 (木) 22:53

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