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2010年12月17日 (金)

エンプティ・スピリッツ、チキン・ハート

えいりあん・めもらんだむ

 最初にお断りしておきますが、この記事は、血糖コントロールのために飲酒やサプリメント摂取をなさっている方々に異議を申し立てるものではありません。皆さん、充分に調べた上で自己責任でその方法を選択なさったわけですし、私はそういう方々の勇気に感嘆しています。これは単に、私がそういう手段を採らないのはなぜか、を一度確認しておくための覚書です。

 「酒を飲めば、血糖値は下がるよ」と何度も言われたことがある。私が飲まないものだから。

 私が酒を飲まないのは単純に酒が嫌いだからなのだけれど、仮に嫌いでなくとも、血糖値を下げるためにエタノール摂取を選ぶことはしないだろう。
 たしかに飲酒すれば低血糖になる時間帯ができるだろうし、その結果としてHbA1cは下がるだろうけれど、でも、HbA1cを下げることが目的ではないもの。

 
 果たして自分が低血糖になれるものか、何度も人体実験してみたけれど、絶食しようが、空腹で走ろうが、すぐに肝臓がグルコースを放出して血糖値は反転上昇する結果に終わった。

 つまり、私が低血糖になりたければ、食事や運動では不足で、なんらかの化学物質の力を借りなくてはならないらしい。
 エタノールは、その化学物質のひとつ。

 酒は「エンプティ・カロリー」だから太らないなんて与太話を未だに信じている人は、いないよね?
エンプティ・カロリーというのは、「エネルギー/カロリーだけがあって、栄養はない」という意味だよ。

 たしかに酒のエネルギーの多くは熱産生に費やされるけれど、その分だけ他の栄養素(タンパク質・脂質・糖質)のエネルギーからの熱産生が少なくなって余った分はしっかり身(=体脂肪)になる。
 だから大雑把に言ってしまえば、必要な栄養素をしっかり摂ってかつ酒を飲んだら太るし、エネルギー/カロリー所要量を守って大量に飲酒したら栄養失調になる。

 体重が軽いことが有利なスポーツ選手は、ビタミンやミネラルまで含めた必須栄養素を所要量食べると、食品にはもれなくエネルギー/カロリーもついてくるから、糖質ましてや酒に割けるエネルギーは必然的に少なくなって、苦労している人が多い。

 太らなきゃいい、という問題でもないけれどね。

 基本的に、エタノールは臓器毒だし。

 よく言われるのは肝臓だけれど、もちろん、血糖値を下げるためにあえて酒を飲むくらい健康コンシャスな方は、肝機能の血液検査結果をチェックしながらなさっていることと思う。

 ただし、私は一般の血液検査で見る肝機能値だけで安心してよいものか、かなり疑問に思っている。
 死んだ父には、肺癌の肝転移がCTでぼこぼこ見えていても、血液検査上は肝機能はまだ正常範囲に入っていた時期があった。「もっと悪くならないと、検査には出ないんですよ。肝臓は沈黙の臓器と言われるくらいですからね・・・」と肝臓癌の手術に関しては日本のゴッドハンドの一人に数えられる主治医の先生が、悲しそうにおっしゃったものだ。ちなみに母のほうは、今日現在でBMI 18.8、AST(GOT)19 U/ℓ、ALP(GPT)14 U/ℓだけれど、造影CTで見ると立派な脂肪肝。1日せいぜい15分の散歩しか運動できない身体だから、改善しようがない。

 肝臓以外にも、エタノールは頭頚部癌の罹患率を上げるし、食道にも胃にも小腸にも悪いし、もちろん脳にも有害だし、筋肉だって溶かすのだから、一時的に低血糖にしてHbA1cを下げるために服用するにはリスクが高すぎる。私には、怖くてとても飲めない。
(ほら、酒屋さんだって言っているのよ。もっとも、こう言ってあるからと免罪符にされてはたまらないが。自覚があるのなら、美術館や音楽ホールみたいなメセナ活動以前に、大学にアルコール依存症専門の寄附講座を作るなり依存症病棟を建てるなりしろよなー!)

 血糖値を下げるために化学物質が必要になったら、私は、酒より薬を選択する。

 薬に行く前にサプリは?という話になったことも、ある。

 これまた最初に言っておくけれど、私はサプリメントを否定しない。私自身、筋トレした日の夜には、骨密度アップのためのカルシウムやら、肉のアミノ酸への分解促進を期待してビタミンB群を呑んだり、サラダの材料が足りないときにはビタミンCを足したりしているし。

 さて、血糖値に関連して勧められたのは、α-リポ酸。今年の春頃、このサプリメントを摂っていた一般の人が低血糖症を起こすという事例が、新聞にも出るくらいのニュースになっていたから、血糖値を下げる効果は強いんじゃないの?と。

 でも、私がα-リポ酸を服用する日は決して来ないだろう。
 α-リポ酸摂取による低血糖発症のメカニズムを見ると、インスリン自己免疫抗体を作るなんて自分自身を1型糖尿病にするようなものだとしか思えないし、低血糖に至る前にはむしろ極端なグルコーススパイクを自ら誘発しているはずだから。もちろん、そんなことになる因子を持っている人は20人か30人にひとりの割合でしかないし、そのうちα-リポ酸服用で低血糖症になる人はさらに少ないことは理解している。でも、HLA型なんか調べたことがない私は、自分が多数派に入っていることに賭ける勇気が、ない

 書いてみて改めて思ったのだけれど、結局、この記事は、私がチキンであることの証明だな。


copyright (c) 2010- えいりあん
 転載厳禁。引用の際は、ブログ「血糖を管理する日々」に言及の上、リンクを張ってください。

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コメント

おはようございます。

飲酒時に血糖値が上がらない、あるいは、下がるという方もいらっしゃいますが、私の場合は、相関は無いようです。

糖質を含むお酒を飲めば、しっかり上がりますし、糖質を含むおつまみを食べれば、これまた、しっかり上がります(笑)。

私にとっての飲酒は、血糖値とはあまり関係がなく、単なる「楽しみ」なんですね…。

夕食は、ウイスキーの炭酸割りや、焼酎の炭酸割りを飲みながら、1時間ほどかけて楽しんでいます。

夕食は、一日を締めくくる、大切な時間です。

うまくいった日も、いかなかった日も、そこで一旦、リセットできます。

なかなか、家族揃ってとはいかないのですが、たまに揃えば、皆との会話も楽しみになっています。

「飲酒」が、「食べる」という行為に含まれているんですね。

私の場合、朝食と昼食は、「食べる」というよりも、「摂取」に近い感覚かなぁ…。

お酒での失敗も、決して、少なくありません(笑)。

自重しつつも、これからも、お酒を「楽しんで」いくと思います。

酒飲みの独り言でした…(笑)。

投稿: sho | 2010年12月18日 (土) 08:58

>shoさん

 こんにちは。

 血糖値を下げるために飲酒なさる方は、ふつう、糖質ゼロないし蒸留酒をお選びでしょう。

 リスクを承知の上で飲んでいらっしゃる方は、それでよろしいんじゃないですか?

 ただ私には、酒はあまりにも高リスクに見えるし、そんなリスクを冒して飲む気にはなれないってだけです。

 だから、この記事のタイトルは、
  エンプティな蒸留酒と臆病な私
なのです。(^^;;;

投稿: えいりあん | 2010年12月18日 (土) 11:55

自己レス

 飲酒なんて個人の嗜好だから、本来、他人が口を出すことではないのだけれど。

 でも、リアルで私の周囲にいる酒飲みたちは、「承知で飲んでいる」と言うくせに無知な人が多い。

 飲酒した翌朝、頭痛がしたら脳が萎縮しているのだし、筋肉痛がしたらミオパチーを起こしている可能性が高い。

 もちろん、たまにそういうことがあっても身体はちゃんと回復してくれるけれど、頻繁に繰り返せば、前者は加齢に伴う脳萎縮を加速するし、後者はやはり加齢に伴う筋肉量の減少(サルコペニア)を加速することになる。


 脳萎縮もアルコール性ミオパチーも知らない、
 将来の加齢現象の促進なんて知らない、
 今なにも問題を感じないのに、酒を飲んで何が悪い?

というのと、

 食後高血糖なんて知らない、
 将来の合併症リスクの上昇なんて知らない、
 今なにも症状がないのに、カーボ食べて何が悪い?

というのは、とてもよく似たことだと、私は思う。

投稿: えいりあん | 2010年12月27日 (月) 21:41

YCATさん、えいりあんさん
明けましておめでとうございますm(__)m

こちらのブログを覗かせていただいてから、様々な知識の集大成、お二方の、時に笑い、時に『たしかに!』と相槌を打たせていただける内容に、いつも楽しみに見させていただいています゚+。(*′∇`)。+゚
本年も、良い変化に富んだ1年になりますよう祈りつつ、よろしくお願いします(^-^)

投稿: 蝶々 | 2011年1月 1日 (土) 13:50

蝶々さん、こんばんは。

 いつもコメントありがとうございます。

 ここ、カウンターの回りの割りに、コメントを入れてくださる方が少ないんですよね。

 こんなもの食べた → 血糖値が上がった(あるいは上がらなかった)

だけではない記事を書こうという意識はあります。(だって、そんなのは自分の代謝の実験というよりむしろ食品の実験になってしまうもの。)でも、もっと日常的な食事日記の類のほうが、お好きな方が多いのでしょうね。

# 正月は私にとって一年でいちばん嫌いな季節です。だから、年始の挨拶はパスでごめんなさい。

投稿: えいりあん | 2011年1月 1日 (土) 20:28

 蝶々さん、あけおめです。

 すいません、遅くなって。CGMS体験記をアップするのに一苦労していたものですから。
 ……ここでやっておかないと、グラフが出た時に記事を作るのが大変(´ヘ`;)

 今年は、本場の白砂糖にチャレンジです。
 ドミニカ産、キューバ産? 
 どっちでも血糖値は上がる(´ヘ`;) パリで<お菓子の国で死す>したいです。
 耐糖能異常(IGT)くらいじゃ死ねないんだよなあ(´ヘ`;)

投稿: YCAT | 2011年1月 2日 (日) 22:10

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