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2010年10月29日 (金)

アジアの耐糖――続・耐糖能の日内変動1

えいりあん・めもらんだむ

Tonyobyo_sep

 『食後高血糖UPDATE』という特集タイトルに惹かれて、お値段に目をつぶって月間糖尿病9月号を買ったのは8月の下旬。すぐに通読したのだけれど、結局のところ、

 食後血糖値の上昇そのものが悪いのか、血糖変動の振幅が大きくなることが悪影響を与えるのか、それとも耐糖能異常のもととなっている病態生理、インスリン分泌の低下や遅延、インスリン抵抗性やそれに伴ういろいろな代謝異常の組み合わせなどがもっと重要で、食後高血糖はそれを示すひとつの指標とみなすべきなのか、疑問は多い。
(葛谷健、"食後高血糖をめぐって:その意義と糖尿病の診断" 月間糖尿病2010年9月号p.24-29)

ということを再認識しただけだったので、他に書きたかった記事3本を優先していたら、2ヶ月も経ってしまった。

 今さら感いっぱいだけれど、ひとつとても気になる記述があったので9月号のネタを。

 私の耐糖能は、朝は良好で、昼はめちゃくちゃ弱く、夜になると普通の(?)2型糖尿病患者なみになるという日内変動を示すということは、過去に何度も書いた。この現象に気づいたのは、自分の耐糖能異常が発覚して間もない頃で、当時ある糖尿病専門医の先生のサイトに書き込んだら、

一般的にはインスリン拮抗ホルモンが分泌される朝~午前中が一番インスリンが効きにくい、つまり血糖値が下がりにくく、活発に活動する日中がもっともインスリンが効きやすい、つまり血糖値が上がらない

と言われて、逆パターンである自分は例外的存在なのだと思っていた。

 ところが・・・

 CGMを用いた健常人での1日血糖プロファイルの報告によると、欧米人では朝食後の血糖値上昇が1日のなかで最も大きいのに対し、日本人や中国人では決してそうではなく、むしろ朝食後よりも昼食後と夕食後の血糖値上昇が大きいことが指摘されている。
(税所芳史、伊藤裕、武井泉、"糖尿病の管理における食後高血糖の重要性" 月間糖尿病2010年9月号p.58-69)

ですって!!

長文注意報! 興味とお時間のある方は、お進みください。

 

 どれどれ、とオリジナル文献を探しに行く。
 日本の論文も中国の論文も、発表されたのは去年の7月。ふーん、ま、CGM(Continuous Glucose Monitoring:持続血糖モニタリング)の装置が出回りだしたのは日本も中国も同じような時期だったのでしょうね。

 中国人のデータは、月間糖尿病9月号でも二つの記事で紹介されていて、オリジナル文献はこちら

 75g-OGTT(糖負荷検査)で正常型(NGT)で、糖尿病も高血圧も高脂血症も冠動脈疾患も脳卒中も一切既往がない中国人434人にMedtronic社のCGMシステムを装着して、3日間血糖値を測定した。全員のデータの24時間の変化の平均と5パーセンタイルと95パーセンタイルを図にしたのが、これ。

Chinese_data

 著者らの結論から一部引用すると、

 3食すべてにおいて、直後の血糖値レベルは、60分後が30、120、180分後より高かった。全般的に、朝食後の血糖レベルは昼食後、夕食後より低かった。

 しかし、このサイトの筋金入り読者のみなさんなら、ここでYCATさんからどういう突っ込みが入るか予想がつきますよね?

 何をどれだけ喰ったか、わからないじゃないか?!

 じっくり読みましたよ、リサーチデザインの項を。

 混合食法。
 被験者は全員、CGMS装着時に一定の基準による食事指導を受けた。CGM実験中は、1日体重1kgあたり30kcalのトータルカロリーを炭水化物50%、タンパク質15%、脂質35%から成る通常食3回で摂り、水は無制限。カロリーは、朝食20%、昼食40%、夕食40%に分配。

 orz
 なんで1/3ずつに分配しないのよ。アホちゃう?
 あるいは、434人も被験者がいたのだから、まったく指示なしに勝手に食べてもらって全員の平均を取ったほうが、変な偏りのないデータになったかもしれないのに。

 これでは、朝食後の血糖値が昼夕食後より低くて当たり前。

 アウトプット(血糖値)だけ議論したら駄目なのよ、インプット(食事)も問題にしなきゃ。
 われらIGT(耐糖能異常者)にとっては日々否応なく思い知らされていることなのに、このグラフを引用して記事を書いた日本のお医者さんたちも、食事条件のことは完全にスルー。orz

 気を取り直して、日本人のデータ。

 ごめんなさいね、無料で読めるのは1ページだけなの。
 27人の日本人にMedtronic社のMinimed Goldを装着して、4日間測定。2日目に75g-OGTT試験したら、24人がNGT(耐糖能正常)だった。3日目に被験者の普通の生活における血糖値を測定した。NGTのデータを平均すると、食後の血糖値ピーク時間は、朝食で40分後、昼食で50分後、夕食で45分後。ピークまでの血糖値の上昇幅は、朝食で21 mg/dL、昼食で37 mg/dL、夕食で44 mg/dLだった。

 この論文、買ったら49ドルかかるの。
 この論文の著者グループの先生がCGMについてお書きになった別の文章を読んだことがあるのだけれど、被験者が食べた食事の内容には全く触れていなかった。だから、この論文にも食事条件の記載がない可能性は高い。いくら円高とはいえ、49ドル賭ける気にはなれないわ。これ、慈恵医大の糖尿病・代謝・内分泌内科の仕事なので、読者の中にそこの患者さんがいらしたら、「あの実験の食事はどうしたんですか?」と訊いてきてくださると嬉しいです。(^人^)

 アブストラクトに「被験者の普通の生活」と書いてあるから、食事はなにも制約なく各自が摂ったのだろうと思うのだけれど。それなら、食事量の多少とかは平均化されただろうと好意的に解釈しておいていいかしら?
 ただ、この仕事、被験者は病院関係者らしいのよね。お昼ごはんはみんな病院の職員食堂で、その日の定食はラーメンライスだったなんてオチがつかないことを祈りたい。

 同じチームの仕事で、正常型だけでなく境界型と2型糖尿病患者のCGMのデータを取った資料もネット上に漂っている。リンク先の3ページ目にグラフがある。(図の解像度があまりよくないので、拾って来ていない。pdfファイルですが、拡大して見てね♪)境界型でも朝食後の血糖値ピークは低くて、昼食後と夕食後が高いのよね。2型糖尿病になってしまうと、しっちゃかめっちゃかになるのだけれど。

 インプット条件に不安が残るものの、それは専門家さえ無視しているのだから、素人患者としてはスルーでおk?

 ということは・・・
朝のマジック耐糖能仲間の皆さん
私たちって、例外でも少数派でもなく、アジアではメジャーみたいよ?!

 75g-OGTT検査を受けると私はヘタレな境界型IGTだが、朝の耐糖能が良好なお仲間の中には正常型のデータを叩き出す方もいらっしゃる。ところが、それはそれで、昼や夜の食後高血糖が医療関係者に認知されないという悩みにつながっていた。でも、CGM登場のおかげで事情は好転するかもしれない。

 これは月間糖尿病2010年9月号の「健常者・糖尿病患者における食後血糖値」という記事で紹介されていた、OGTT正常型の人のCGMのデータ。

Japanese_ngt

 糖負荷検査で正常型であっても、食後に血糖値がはねあがっている。

 原図をプリントアウトして持って行って、
「私もこれと同じじゃないかと思うんですぅ」
と言えば通用するかも?
(この記事の最初の2ページは無料で読めるから、見てね。私の落書きのない原図と、もうひとつ食べても殆ど血糖値が上がらない教科書的な正常者のグラフが並んでいるから。)

 著者のセンセイ方は、

筆者らの経験では,同様の食後血糖値を示す「正常型」の者が散見された.耐糖能が正常型と判定される者においても,日常生活での食後血糖値にはある程度のバリエーションがあり,

とか書いているけれど、私らIGTが知りたいのは、
「これって正常? それともビョーキ?!」
ってことよね。血糖値200 mg/dl越え2回で糖尿病なら、このCGMの人はほとんどビョーキだし、75g-OGTT結果を優先するなら正常。どっちよ?!という疑問については、華麗にスルー。

 ・・・存在が認知されたとしても、いまだ夜明け前かなぁ。

 


copyright (c) 2010- えいりあん
 転載厳禁。引用の際は、ブログ「血糖を管理する日々」に言及の上、リンクを張ってください。

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コメント

『通常の』75g-OGTT検査は正常型のデータを叩きだし
朝のマジック耐糖能を持つknackeです。
稚拙コメントになろうが
明後日な方向性なコメントになろうが
この記事にコメ入れずして、いつ入れる?

同タイプの患者でなければ
これに関することを深く追わないでしょう。
この記事をエントリーして下さったこと感謝します。

CGMすばらしい。やりたい(?)
ビョーキか正常かの判断は医師(専門医)によって違うなぁってのが
私が経験から感じることです。
自分的にはビョーキと思ってます。
新たに保険とか入るとなると
医師によって判断が分かれるってことは
どうなの!?
保険に入る予定ないんでいいんですけど。

慈恵医大の西村先生がおっしゃる
『血糖変動パターンを耐糖能正常者のパターンに近づける』
ことを運動だけで達成しようとすると大変だし、無理がある。
食事療法するにしろ投薬治療するにしろ
インプットの糖質量を把握することは
やはり必須だと思うのですがね。
オーダーメイド治療時代の到来を予測してみえますが
それならば、尚更。。。

私は朝っぱらからカレーでもステーキでもドンと来い!
なタイプなので、マジック耐糖能を生かすべく
朝っぱらからタラフク食べられますが
そうではない人って多くありませんか?
というか、私の周囲は家族友人殆どそんなです。
なので、『被験者の普通の生活』での朝食の量どうなんでしょ?

私など朝っぱらから食欲の塊のように見られます(笑)
蛋白質も脂質も食物繊維も、しっかり入れないと
マジック耐糖能であっても血糖値のピーク叩けないもの。

アジアでメジャーな朝のマジック耐糖能と
アジアでメジャーなヘタレインスリン分泌
見た目も中身も恐ろしくアジアンですわ。

投稿: knacke | 2010年10月31日 (日) 12:38

>knackeさん

>この記事にコメ入れずして、いつ入れる?

 うふふ、内輪ネタの甘美な誘惑♪

>同タイプの患者でなければ
>これに関することを深く追わないでしょう。

 そうなのよ。
 でもって、OGTT正常型や境界型でSMBGしている人がそもそも少ないから、私たちのようなパターンが例外のように見えていたのであって、実は糖尿病に至るごくごく初期の兆候ってコレじゃないの?という気がしています。(←アジアではメジャーかも?から、さらに進んでいきなり主流派を主張(^o^))

>インプットの糖質量を把握することは
>やはり必須だと思うのですがね。

 レトルトの療法食や介護食はたくさん出ているのだから、サンプル提供を受けて2ダースくらいの被験者みんな同じものを食べて実験したらいいのにねー。糖質だけでなく栄養成分すべて既知なのに。
・・・とかいう話も原稿には書いていたのですが、あまりに長くなるので削除したのでした。

 念のために、と読んだ欧米人のCGMの論文が実はいちばん美味しくて、続編を書くことにしましたが、
・・・が、
まだ1字も書けていません。(u_u;;;
 いつになることやら。

 きっとYCATさんが北海道スイーツ紀行エントリーをたくさん書いてくださるから、その後でいいわよね♪

投稿: えいりあん | 2010年11月 1日 (月) 22:45

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