アップサイドダウン―――インスリン感受性の光と影
えいりあん・めもらんだむ |
食事やら運動に気を使って血糖値を抑え込んでいるのに、HbA1cは変わらない。(7月の4.9 %を除く。1回こっきりだから、今のところ棄却しておく・・・(;_;))
SMBG(血糖自己測定)データが低めに推移した月の後は、少しくらいHbA1cが下がってくれてもいいのに、なぜ私のHbA1cは動かないのだろう。
早朝空腹時血糖値が3桁の日々が半年くらい続くのだから、HbA1cは5 %台半ばで当然だろう、と言われそうだけれど、実は私の場合、医療機関での静脈血採血による血糖値データ はSMBG(血糖自己測定)データより低く出る。こんなふうに。↓
測定年月 | 採血機関 | 静脈血血糖値 | SMBG値 |
2010年 8月 | 人間ドック | 90 mg/dl | 直前99、直後97 mg/dl |
2010年 7月 | クリニック | 86 mg/dl | 直後101 mg/dl |
2009年10月 | クリニック | 89 mg/dl | 直後99 mg/dl |
2009年 8月 | 人間ドック | 89 mg/dl | 直前100、直後91 mg/dl |
2009年 7月 | クリニック | 89 mg/dl | 直後107 mg/dl |
(注:人間ドックでは朝、クリニックでは夕方の採血で、どちらも空腹時。)
SMBG値のほうが医療機関での測定値より、最小で7 mg/dl、最大で18 mg/dl高くなっている。私の使っている血糖測定器は、全血のグルコース濃度を血漿グルコースに換算して表示する仕様なので、この差は指尖末梢血と静脈血の差なのだろう。
だから、SMBGでぎょっとする数字を見ても、『で、でも本当はもう少し低いのよ!』と内心思っていたし、この差を加味するならHbA1cは5 %あるかなしかの水準が妥当なんじゃないかと不満だったのだ。
まあ、血糖値とHbA1cは良く相関すると言っても、同じ平均血糖値に対してHbA1cは±1 %も上下するのだという(あーう、このデータが一昨日まで糖尿病ネットワークに載っていたのに、今見たら削除されていました。元ネタはたしかDiabetes Careの論文だったので、見つけたらリンク張ります。→このグラフ。ちなみにグラフでいちばん低い血糖値あたりの7 mmol/lは126 mg/dlに相当。2010/11/18追記:dm-netのファイルが復活していました。→こちらのグラフ。)から、0.5 %程度の差について議論しても意味ないのかもしれないが。
それでも、HbA1cで1 %の差は大きいよね。
それを全部、個人差と片付けられるのは、ちょっと釈然としない。
個人差はあって当然だと思うけれど、それがどういう原因で生じるのか、少しは説明してもらいたいものだ。
・・・と、つらつら考えてみた。
長文注意報! 興味とお時間のある方は、お進みください。
血糖値は、動脈血のほうが静脈血より空腹時で約10 mg/dlほど高く、食後ではさらにその差が大きくなるのだという。動脈血中のグルコースが筋肉や臓器に取り込まれた後の血液が静脈を流れるのだから、これは当たり前の話。
末梢血における血糖値は、当然、動脈血と静脈血の間で動脈血血糖値よりの値を取るらしい。空腹時の血糖値では、動脈血より4 mg/dlほど低くなるとか。
#これらは、あちこちに書いてあることなのですが、オリジナルのデータを発見できません。どなたかご存知でしたら、コメントでご教示ください。
図にすると、こんな感じかしらね?→
(どこかから絵を拝借したかったのだけれど、見つからないので自分で描いた・・・(;_;))
とすると、私の空腹時血糖値の末梢血-静脈血の差って、ちょっと大きいんじゃない?
さて、インスリン抵抗性が高い場合には、グルコースの取り込みが充分にできなくて血糖値が下がらないことが問題になる。
←こんな感じかな?
・・・ということは・・・
インスリン抵抗性のある人とない人がいて、もしそのふたりの静脈血での血糖値が同じだとしたら、インスリン抵抗性のない人のほうが動脈血では高血糖ということになるんじゃない?
つまり、こういう図。→
私の場合は、インスリン抵抗性はない、というよりむしろインスリン感受性は抜群に良好だから、動脈血での血糖値から静脈血への血糖値への傾斜は普通の人より少し急なのかもしれない。
だとしたら、静脈血での血糖値が低くても、動脈血における血糖値は普通の人より高いということがあり得るのでは・・・?!
赤血球は約120日の寿命があって、血管の中を回り続ける。動脈も静脈も。
HbA1cは糖化を受けたヘモグロビンの1種で、血中グルコースが多いほど糖化される割合も多いから、という理由で血糖値と相関することになっている。実際に血管中のどこでヘモグロビンが糖化されるのか、私は知らないのだけれど、グルコースのたくさんある場所で糖化反応がよく進むと素朴に考えてみる。つまり、動脈。
もし動脈での血糖値が高ければ、ヘモグロビンの糖化が進んでHbA1cは高めになるだろう。たとえ、静脈での血糖値が低くとも。私の空腹時血糖値が、医療機関で採血した静脈血の血漿グルコース濃度としてはだいたい80 mg/dl台で、SMBG値的には食後高血糖を出さないように気をつけているにもかかわらずHbA1cが下がってこない理由は、ひょっとしてコレじゃなかろうか。
あちらこちらの2型糖尿病患者さんのブログを見ていて、血糖値の検査データは私とあまり変わらないのに、かつインスリン感受性は私ほど高そうではないのに、わりと簡単にHbA1c4.8 %だの4.6 %だのに到達できる人がいるのが不思議でならなかった。これも、動脈における血糖値が、私のほうが高いからだとすれば納得できる。(したくないけれど。)
そして、境界型のうちでも、空腹時血糖値が高いIFGでは大血管障害のリスクは上昇していないのに、糖負荷2時間後の血糖値が高いIGTは糖尿病確定者と同じようにハイリスクだということとも関係しているのではなかろうか。だって、IFGに比べたらIGTはインスリン抵抗性は低い人が多いはずだし、血糖値は大きな動脈のほうが小さな動脈より高いのだもの。
もしこの推論がアタリだとしたら;
静脈血の血糖値が同じなら、インスリン抵抗性があるよりインスリン感受性が良いほうが、動脈硬化のリスクは高いことになる・・・って、あんまりだわ。(;_;)
だいたい動脈硬化の発症・進展は糖尿病の宿命だとか言って脅かすのなら、動脈における血糖値を評価できるようにして欲しいものだ。動脈血採血なんてお気楽にはできないけれど、インスリン抵抗性/感受性の多寡を取り込んだ上で、静脈血の血糖値から動脈血の血糖値に換算する式くらい作ってよねっ!>糖尿病を生業とする医療関係者の皆様
# 自分で考えたことだけれど、私はこの話の帰結がまったくもって気に入らない。だから、突っ込みコメント歓迎です。>読者諸氏
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コメント
おお、お疲れ様です。
これだから下書きからアップまで、いつも以上の時間が経過したのですね、えいりあんさん。
>突っ込みコメント歓迎です。>読者諸氏
ってたって、ああた(´ヘ`;)
ここに突っ込むのはてえへんですよ。
推論の方向は悪くないとしても、実証する手が見つからない。そこをどうにかしないと、つまりは神学論争になるでしょう。
そこを踏まえた上でなら、それもまたよきかなですが。
それに動脈血から分岐/拡散した抹消血の血糖消費はどの程度のものなのか? 4mg/dl予測ってのは、どうやって算定したのでしょうかね。
血圧のせいで道草している暇なんかないと「いままで通り、指でいいじゃん」って、医師はいいそうな気もします。
いままで気がつかなかったですが、私もオリジナルデータを見てみたいものです。でも、もっと細かく言えば、動脈の各分岐点ごとの測定データがないと、ちゃんと検証したとはいえないんじゃないでしょうか?
動脈血を採取するには、『椿三十郎』のラストシーンにするしかない気もする(´ヘ`;)
あ、参考として鶏の……。
ン? 鶏の血糖値とヒトの血糖値って、相関するのだろうか? 秋の日は長いとはいえ、これまたエンドレスな難問ですなあ(´ヘ`;)
助けてくださった方には、イタリアンのディナーをご馳走します!
……って、うちの主治医だって乗ってこないんじゃないかしら?
投稿: YCAT | 2010年10月13日 (水) 00:56
みきと申します^^
突然すいません。
病気系で同じかなと思い相互リンクをお願いしたいと思っています。貴ブログはすでにリンクしてます。別ページに貼ってます。(リンク集)
それでよければお願いできますか?
もし無理であれば大丈夫です。いきなりですもんね。
なんだか機械的に書いてしまい申し訳ありません。
ではでは^^
投稿: みき | 2010年10月13日 (水) 12:49
えいりあんさんこんにちわ(^-^)
ん〜(~ヘ~;)今回も興味深い内容ですな。
血液の循環がある以上、糖化する反応が多そうなのは静脈よりも濃度の高い部位で起こりそうな気がしますね、、、
何を根拠に言ってるんだ!?と私も突っ込まれそうですが、
動脈〜よりさらに前、肝臓の門脈への糖質流入から大循環に移行する段階でも糖化反応がありえそうなのかな(・・?)
肝臓のインスリン関係なしのグルット2の性能に個人差とかあって関係しちゃうのかな?
門脈血段階でのHbA1c測定!って人体実験レベルで無理か(~ヘ~;)
まだまだ勉強足らずな私ですから、たぶん突拍子もないことを言ってしまってますね(οдО;)
投稿: 蝶々 | 2010年10月13日 (水) 13:49
YCATさん
コメント早いですね。また昼夜逆転生活に戻っちゃったんですか?
> 推論の方向は悪くないとしても、実証する手が見つからない。
え~? ただ、あーでもない、こーでもない、って言い合えばいいんですよ。それがディスカッション。
>そこをどうにかしないと、つまりは神学論争になるでしょう。
神学論争ってのは、「問答無用、○○に決まってる!」っていうヤツ。
あ、○○の部分はテキトーに入れてください。「インスリン高感受性はいいこと」とか「内臓脂肪は悪」とか「糖質制限サイコー」とか。
そもそも、この話は素朴な疑問のひとつに過ぎないのですよ。
動脈硬化のリスクが高いと言うくせに、なんで動脈の血糖値から話を始めないの?っていう。
動脈血の実測値を調べるのが難しいのはわかっています。だから推測値でも換算値でも、あるいは動物実験の結果でもいいんです。
でも、動脈の血糖値を問題にすべきじゃないか、なんで静脈血の検査値で満足しているの?>お医者さん
という素朴な疑問。
血圧ならいいんですよ。基本的にあれは動脈の性質だから。でも、血糖値は明らかに動脈と静脈で違うのですもの。
投稿: えいりあん | 2010年10月13日 (水) 22:23
蝶々さん
糖化反応についても考えるほどわけがわからなくなりますが、とりあえず高血糖が動脈硬化を招くとして・・・
素朴な疑問シリーズその2:
なんで真っ先に門脈硬化しないの?
とか思いません?
投稿: えいりあん | 2010年10月13日 (水) 22:29
ほんとだ!!!
なんで門脈が一番最初に動脈硬化しないんだろ!?
………なぞい(~ヘ~;)
門脈には硬化を引き起こさない何かがあるのかな(・・?)
人体の不思議でまた迷子中\(・_・;)(;・_・)/
投稿: 蝶々 | 2010年10月13日 (水) 22:38
みき姫様
血糖を管理する日々の管理人YCATです。
コメントありがとうございました。
もうしわけありません。リンク依頼はたくさんあるのですが、ご覧のように、込み合ったデスクトップ状態です。リンクはご容赦いただいております。
視力回復について、いろいろ考察されている記事内容、ちょっと拝見いたしました。
ほとんどのリンク依頼が、検索エンジン対応用のSEO手段であるスパムでうんざりしている中めずらしいので、どうにかしてさしあげたい気持ちもあるのですが、必要な情報を適宜提供する為に、リンク先はしぼりこんでおります。
視力に関する記事が、数点あります。そこに関連した記事をおつくりになって、トラックバックしていただければ、それがリンクの代用になります。網膜症に関する情報、ご意見があればどうぞ。
脆い血管
続 脆い血管
このトラックバックがまた、ほとんどがPR目的。ネットクリックじゃタバコ代(値上げ前の)も稼げないってのに、「SEO対策で、在宅で儲けよう」出版に踊らされて、その出版社の利益に寄与している方が……ほんと……多い(´ヘ`;)
当方のブログがリンクされているのを確認いたしました。
TOPページ中のリンク集ではなく、別に設定した<病気リンク集>の中でしたね。
……これ、探すのに5分かかりました(´ヘ`;)
ただの<リンク集>から別カテゴリーを作っただけましですが、病気といっても、ブログランキングをみてお分かりのように、沢山の種類があります。それぞれについてタイトルをつけたカテゴリーにした方が、読者の助けになります。面倒ですが、ご一考下さい。読んでもらうために、書いているわけですから。
ランキングアップにはつながりませんが、貴重なコメンターを獲得するには、この方が実は近道です。
リンク推奨のコメントをつけるのは大変ですが、やって損はありません……多少空しいけど。
数千人ののTV視聴者より、、数十人の「サインくれ」ファンより、一人のうるさ方(^!^)
どのサイトにリンクしているか?
その取捨選択の理由がわかれば、記事内容の背景も理解でき、ひいては、記事作成の意味を深く理解できる。その考えの下に、記事だけでなく、コメント、リンク先、すべて読む私のような馬鹿もおります(´ヘ`;) テキストだけじゃ人間性はわかりません。
これだけリンクが貼ってあると、さすがの私もやりません(やれない)が、以前、違う方のブログに貼ってあるリンク全部読んだら、どう考えてもその方のブログには縁がなかったことがあります。
「このリンクは、どんな意図で貼ったんですか?」
大喧嘩(?)した後、親しくなってから聞いてみたら、あとで読もうと思って、貼っておいただけですって(´ヘ`;)。
ひまだねえ……って、それをやったのは3日連続徹夜の最中。
忙しい中、コメントを急がなきゃと思いつつ「必読、栄養士の資格取得法」をさっと30分眺めた時は、むかついた(´ヘ`;)
親しくなった後に聞いたので笑えた……笑うしかなかった(´ヘ`;)
投稿: YCAT | 2010年10月14日 (木) 00:27