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2010年1月31日 (日)

カーボは気まぐれ――モーニング・マジック(2)

えいりあん・めもらんだむ

 デザート・ロード――モーニング・マジック(1)で出した、朝のマジック耐糖能が効いた場合と効かなかった場合のデータをひとつのグラフに重ねると、下図のようになる。

Carb_vs_ss

 もうね、この図だけ提示すれば何も言わなくていいという気もするのだけれど、あえてしつこく書く。

 エネルギー(カロリー)が血糖値を上げると思っている人は、この図を見て欲しい。(そういう人は、ここには来ていないだろうけれど・・・)
 食後高血糖を避けようと思ったら、ハイカーボ食品は食べてはイケナイと信じている人も、この図を見て欲しい。

 エネルギーにして4倍、糖質含有量は1.1倍の食事を摂っても、グルコーススパイクを回避できている。
 条件さえ整えられれば、そういうことも可能だということを、知って欲しい。

長文注意報! 興味とお時間のある方は、お進みください。

 糖質を食べなければ血糖値は上がらない、というのは確かに真実だけれど、食べても上がらないような時にも糖質摂取を禁止する意味はあるのか? 少なくとも私は、単に摂取禁止食品を決めるという単純な手法には満足できない。

 摂取糖質量をカウントして許容量範囲内で食べる、というのは第一次方針としては全く正しい(し、私もそうしている)けれど、実態はそんな単純な話ではないことは、このグラフから明らかだろう。カーボカウントだけに頼っていると、時々ひどい目に遭う。というか、私は何度か遭った。

 糖質1 gの摂取に対して血糖値は3 mg/dl上がるとか5 mg/dl上がるとか、これまたそんな単純な話ではないことも、私のように耐糖能の大きな日内変動を経験している人には同意してもらえるだろう。

 とにかく、糖代謝はもっと複雑系

 私の血糖値は、タイミングさえ間違えなければ、ある閾値まではNGT(耐糖能正常者)のようにピークでもせいぜい120 mg/dlまでしか上がらない。閾値を越えると、摂取糖質量に比例する感じで上がりだす。その閾値は、朝で45~60 gくらい、昼はたぶん5 gくらい(=ほとんど基礎分泌で処理できる量か?)、夜は25~40 gくらいだと思う。(これは単なる経験上の感触。ずいぶん幅があるのは、季節変動と、私の場合生活スケジュールに起因する週内変動があるから。)あくまでも、タイミングを外していなければ、の話だが。

 ドリンクゼリー実験のように急速に糖質を入れてしまうと、血糖値も急峻に上がってグルコーススパイクが出てしまう。
 ゆっくり食べていても、許容量をオーバーするような大量の糖質を摂取すると、後から血糖値が上がって、たとえば 138 mg/dlくらいの血糖値が遷延することになる。

 つまり、いつもの朝食で私がやっているのは、1)自分のインスリン追加分泌量の許容範囲内の糖質を、2)追加分泌タイミングにちょうど合うように食べる、こと。ただ、それだけ。

 真昼の血糖――耐糖能の日内変動で解析したように、私の場合、朝はインスリン追加分泌第II相が ちゃんと それなりに出る。その追加分泌で対応できるように糖質を食べれば、NGTのような血糖応答ができる。
 上のグラフに細いオレンジ色の線で書いた、いつもの朝食の摂取糖質量累計曲線のように、5gの糖質を20分かけて脂質やたんぱく質や食物繊維に混ぜ込んでじわーーーーっと投入すれば、私のインスリン分泌はちゃんと追随してスタートできる。そして、その後10分で40gの糖質を入れても、対応できる。摂取糖質量累計曲線を微分すれば糖質投入速度が得られるわけだが、その立ち上がりカーブと私のインスリン分泌速度はパラレルになっているはずだ。(血糖値&血中インスリン濃度の連続モニターが欲しい!)

 これが、私の朝のマジック耐糖能の正体。

 なんか、わかってみればごく当たり前の現象で、つまらない。マジックはマジックのままのほうが、良かったような気分。

 ちなみに、夜も小規模ながら(というのは、糖質許容量が少ないから)、朝と似たようなことができる。鍋で満腹した後にカーボ20 g分のりんごを食べても血糖値は100 mg/dlとか。

 ただ、言葉にすれば簡単だけれど、カメレオンのように変化する耐糖能を把握して、それに合わせたカーボの食べ方を確立するのはなかなか大変な作業で、まだまだ私は修行中。

 現時点でベストのカーボカウント本(私だって、これは認める。収載されている血糖測定データの貴重さに鑑みて。だからこそ、ちょっと確認すればわかる事実と異なる記述が、増刷という修正機会があったにもかかわらずそのまま残されていることが理解できないわけ。)を評してYCAT様は「糖尿病を借りてきた猫にする方法」とおっしゃった。
 糖質制限は、檻に閉じ込めっ放しにする手法だと思う。カーボカウントは、鎖につなぐ方法。
 私は、調教してノーリードで連れ歩きたい。
 (そのうち喰い殺されるのだろうけれど。)

 残る謎は、なぜ昼にはマジックができないのか、ということ。なぜ、昼だけインスリン追加分泌第II相が出て来ないのか。
 この謎解きは、インプット(=食事)とアウトプット(=血糖値)しかデータを採れない患者には無理だと思う。もしいつか医学/生化学/生理化学の研究者の方がこの文章に遭遇なさったら、そこんとこヨロシク。

 インスリン低分泌家系には、若くて耐糖能正常であっても追加分泌第I相が欠落している人が多いというデータがあるから、ひょっとしたら私の追加分泌第I相も元からなかったのかもしれない。だから、第I相のことは考えない。
 糖尿病って、細かく言うといったいどう進行するのだろう? 定説も理論も知らないのだけれど、自分のデータを見ていると、追加分泌第II相は、昼→夜→朝の順で失われて行くのではないかという気がする。原因は理解できないまま、その経過だけを測定することになるのだろうか・・・?

蛇足:私の身体が朝のマジック耐糖能を発揮している時には、実は高インスリン血になっているのではないか?という疑問をお持ちになった方がいらっしゃることと思うので、予め返答を書いておくことにする。

 私はそんなにインスリン分泌できません。75 gの糖負荷に対して、最大で23.6μU/ml(@120分後)のインスリンしか出せませんでした。これで高インスリン血というのであれば、1型およびかなり進んだ2型糖尿病患者以外、世の中みんな高インスリン血の人ばかりになってしまいます。
 では、なぜ低インスリン血のくせにカーボ45 gに対して血糖値が100 mg/dlから上がらないような応答ができたかというと・・・、これこそインスリン感受性の高さが為せる技なのでしょうね。

 だから、運動しましょうね、ってことです。

 インスリン分泌低下は膵臓のβ細胞の問題ですが、インスリン抵抗性/感受性はその他の全身の細胞の問題。血中グルコース取り込みへの寄与率から考えると、筋肉細胞がメジャー。
 すでにビョーキのβ細胞を鞭打つわけにはいきませんが、ビョーキでない部分を鍛えることに、なんの問題がありましょうや。(糖尿病と、筋肉疾患や運動を禁止される他の疾患を併発しておられる方、ごめんなさいね。ここは、運動可能な方々を念頭において書いています。)

copyright (c) 2010- えいりあん
 転載厳禁。引用の際は、ブログ「血糖を管理する日々」に言及の上、リンクを張ってください。

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