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2009年12月18日 (金)

マイノリティ・リポート――空腹時血糖値の季節変動(2)

えいりあん・めもらんだむ

 夏高く、冬に低い私の早朝空腹時血糖値を気温に対してプロットし直したのが、この図。

Fbs_temp

 グラフの横軸は、測定日の最低気温@えいりあんの居住市。(別の場所に居た日は、そこの気温。)

 データポイントはかなりバラついているけれど、まあ1次の相関があると言って良さそうな雰囲気。特に低温領域。

 ところが、一般には、血糖値というのは春~夏が低くて、秋~冬が高いのだそうな。
 さくっと検索しただけで、そう書いてある論文がこんなに出て来た。(アブストラクトしか読んでいないので、内容紹介は勘弁してね。だって、フル・テキストは有料なんだもん。)
"Seasonal variation in fasting glucose and HbA1c in patients with type 2 diabetes," A. Gikas et al., Primary Care Diabetes, 3(2), 111-114 (2009).
"Seasonal variation in fasting plasma glucose levels in man," L. Suarez and E. Barrett-Connor, Diabetologia, 22(4), 250-253 (1982).
"Seasonal Variation of Blood Glucose Level in HbA1c among Diabetic Patients at Mitoyo General Hospital." KURIHARA NAOKO and YONEI TAIJI, Journal of Mitoyo General Hospital, 20, 17-22(1999).
"Seasonal variation in plasma glucose and hormone levels in adult men and women," KM Behall et al., American Journal of Clinical Nutrition, 40, 1352-1356 (1984).

 逆に夏に高くて冬には下がると書いてあるものは、ひとつも見つからない。

 ひとつだけ無料の文献が見つかったので、図を拝借。

"Seasonal Changes in Preprandial Glucose, A1C, and Blood Pressure in Diabetic Patients," W. W. Liang, Diabetes Care, 30(10), 2501-2502 (2007). から引用。

Cited_fig_2

 大きく波打っているカーブは各月の平均気温。ほとんど横一線(に見えるの。私には。)のデータが血糖値。
 これでも著者の結論は、血糖値と気温は「逆相関する」。r2= 0.12 で言わないで欲しいのだけれど。せめて「弱いながらも」とか「わずかに」とかいう形容を付けなさいよねー。(私がレフェリーなら、絶対そういう意見を返す。)

 で、なぜそうなるのか、理由は書いていない。

 上に掲げた私の空腹時血糖値とその日の最低気温について決定係数を出してみたら、あれだけバラついたデータ全部をぶち込んでも、r2= 0.37での相関。


 血中インスリン濃度も血糖値と同じ傾向で、春~夏が低くて、秋~冬が高いらしい。

 これは、納得できる。
 果実食を特徴とする霊長類の一員として、もっとも糖質含有量の多い食物が豊富に手に入るのは、収穫の秋。食べて、脂肪として蓄えて、来るべき冬に備えなくてはならない。だから秋にインスリンを多く分泌できる遺伝形質が有利。我々がそれを受け継いでいるのは、当然でしょう。

 でも、そうすると、私の身体の反応の仕方のほうが、論理的よねえ?
 体温-気温差の大きくなる秋~冬には体温維持のために必要なエネルギー代謝が増加するから、消費される血糖の総量も多いはず。
 それに加えて、インスリン分泌も多くなる季節なら、血糖値下がってあたりまえじゃん。

 なのに、なんでみんな逆なの?
 ちょいと多数派のみなさん、あなたがたの身体はなぜそういうふうに動くのか、私に納得できるように説明してくれません?

 一般論として「冬は血糖値が高くなるから気をつけましょう」なんて書いてある文章をたまに見かける。栄養相談のパンフレットやなんかで。
その理由たるや、
「冬は忘年会やお正月で食べ過ぎるから。」
「寒いから運動しなくなるから。」

 ・・・患者を馬鹿にするのもほどがある、と思いません?

 耐糖能異常者たる者、いつ何をどれだけ食べたか、いつどれだけ運動したか、本人がいちばん把握しているに決まっているではありませんか。
 少なくとも、お医者さんや栄養士さんよりは患者本人のほうがわかっていることでしょ。
 忘年会だ新年会だと欲望の赴くまま食べ歩き、家に帰ればコタツムリと化す耐糖能正常者と一緒にして欲しくないわっ。<(`^´)>

 たとえ定説と正反対の結果であっても、自験データを支持する文献をひとつも見つけられなくても、私は自分のデータを信じる。

# 実はYCAT様には、早朝空腹時血糖値が高いといっても最高112 mg/dlを記録したに過ぎない私のデータなんて、縦軸の上限値を160 mg/dlくらいに取ればほとんど誤差範囲と言われたのですが、それに対してはこの場で「データの微細な変化を見逃さずに傾向を読み取ることこそ、データ解析の肝です」と反論しておきましょう。

 ・・・と、ここでやめておけばいいものを、なおもデータをつつき回した私は、お化けを飛び出させてしまうのでした。

copyright (c)2009- えいりあん
 転載厳禁。引用の際は、ブログ「血糖を管理する日々」に言及の上、リンクを張ってください。

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コメント

>患者を馬鹿にするのもほどがある、と思いません?

 まったくその通りなんですが、実は、そうされてもしょうがない患者の方が多いって実態もあるようです。
 尋問すると「あ、そういえばあれも食べたっけ」などなどでてくるし「あれは?」と誘導尋問すると、食べてもいないのに食った気分になったり……自白ほどあてにならない証拠はないって、糖尿病外来現場は思っているみたいです。
 まして年末年始は、アルコールの勢いはあるわ、集団蛮行の混乱はあるわで、よほど意識しないと食生活は記憶の外ってことになりがちでしょう。
 私が代謝関連データを記録し始めた背景には、栄養士さんにケチをつけられたくないって気分がありましたが、もらさず全部記録するのはやっぱり大変です。
 レコーディングダイエット――たんに体重測定記録だけで痩せる人が出てきちゃう不思議の背景もその辺にあるように思っています。
 だからこそ食品交換表の単位数や、総カロリーの把握ではなく、カーボだけチェックすればいいカーボカウントがお勧めなんですけどね。
 
 

投稿: YCAT | 2009年12月19日 (土) 00:53

測定器は10~40℃の室温で使用とされています。
関係ありませんか。

投稿: モンチ | 2009年12月19日 (土) 07:12

>モンチさん

 いらっしゃいませ。

 前記事震えて眠れ――空腹時血糖値の季節変動(1)で書きましたように、私の血糖値測定器は
>装置仕様に定められた使用温度範囲(14~40℃)
でして、これより低い温度ではエラー表示が出ます。
 そのため、冬季の朝は測定器を暖めてから測っています。

 それでも、使用温度範囲(14~40℃)の中でも温度により血糖値表示値に一定の傾向が出るのかもしれないと思い、メーカーに確認したところ、
>メーカーに電話して訊いたら、使用温度範囲内なら影響なしと一蹴された。
ということだったのです。

 それでもなお疑り深い私は、メーカーが認めないだけでやはり測定の温度依存性があるのでは?と怪しんでいましたが、1月には5.0 %だったHbA1cが7~8月には5.2~5.3 %となるに至り、
>SMBG測定値が高かった夏にはHbA1Cも上がっていたから、本当に私の血糖値が高かったことは間違いない。簡易測定器のせいではない。
と結論せざるを得なくなったのでした。

投稿: えいりあん | 2009年12月19日 (土) 12:58

>YCAT様

>実は、そうされてもしょうがない患者の方が多いって実態もあるようです。

 そうなのでしょうが、しょうがない正常者のほうがもっと多いでしょ。
>よほど意識しないと食生活は記憶の外
の正常者(含、医療従事者)に言われたくない、って表明してみたかっただけです。(^-^)
 ついでに、そんなしょうもない文章をプロとして書くな、とも言いたくて。せめて私のデータ程度の根拠を持って来い、と。(しかし、一報も文献を発見できないのには、めげました。全世界を敵に回した気分。(u_u;;;)

 だいたい、体重が不変ならエネルギー過剰ではない、というのは第一次近似としては正しいのだから、体重増加していないのに血糖値が上昇した患者に食べ過ぎを疑うのは(カロリー主義者としては)論理矛盾だと気が付かないのが、不思議。

投稿: えいりあん | 2009年12月19日 (土) 13:20

>そんなしょうもない文章をプロとして書くな、
>とも言いたくて

 コメント欄の価値を実感されておりますでしょうか? そうした文句を言う場としては、ここが一番の場所なのです! 

 だって「しょうもない文章をプロとして書くな」って言うのは、実に空しいものなのです――どこまで行っても、ただの愚痴どまり(´ヘ`;)
 大方のブログは、それで済ませています。
 一国一城の主である分、通りすがりの<ツバ>の集積場より態度は悪くないのですが、それでは2chを非難しても「テンツバ」にしかなりません。どっちも文句を言う本人のガス抜きで終わっちゃうだけが結果でしかなく、垂れ流しはとまらないでしょう。
 
 とはいえ、ちゃんとした記事に仕立てようと思えば、大元は日本の教育現場――ひいては民族的しつけの問題にいたることに気がついたりします。
 で、手のほどこしように困る(´ヘ`;)

>体重増加していないのに血糖値が上昇した患者に
>食べ過ぎを疑うのは(カロリー主義者としては)
>論理矛盾だと気が付かないのが、不思議

 困った話ですが、類似事例は山ほどあります。むしろ、そうじゃない事例を見つける方が早かったりします。そう思いませんか? 
 お読みになっている経済紙である日本経済新聞より(たとえ、偉そうな永田町目線の政治記者や、科学全般、当然医学分野も読者レベルに毛の生えた程度のどシロウト記者ばかりでも)、さすがは天下の朝日新聞。ここ数年登場した「私の視点――各専門分野従事者の投稿」を読むとそんな話ばっかりです。

 昨日12/19朝刊の山形大学医学部先端分子疫学研究所特任准教授の成松さんの話もその類。
 厚生労働省が、新型インフルエンザワクチン製造目的で950億円の基金を補正予算で要求していることの是非を論じているのですが、ことの詳細は別として、もっとも痛感するのは、議論の<焦点が合っていない>様子が見えることです。
 ここ数週間の記事を見ていた限りでは、成松さんの言う通り無駄金で、結局は基金運営組織への天下りだけが残ってしまうことになりそうです。
 ……意図的な天下り狙いであるわけじゃないのが、もっとも淋しい話なんだけど、そう気がついている人がどれほどいるか(´ヘ`;) 厚生労働省の官僚たちは、ない知恵を絞って最善の策を<あくまで善意かつ向上目的>で提案しているはずなのです。そこには日本文化の粋でもある、小知恵がいっぱいつまっているのですが、いかんせん、全体をみる視点がないから<コロンブスの卵>手法には、永遠に縁がない。
 いい加減で楽をすることばかり考えている人間は<あくにん>と呼ばれがちですが、マジメな善人は、世界をひっくり返すのは得意技じゃないのが歴史的事実で……もっとも、そうであるからこそ、日常局面がぎくしゃくしないんですけど。
 
 トヨタ自動車の<かんばん>システムは、どこでも真似しようとしますが、ほとんどが「仏作って魂入れず」に終わっています。
 見た目を真似るだけなので、ほとんどが「リスク負担を末端に押し付ける!」だけの結果。
 右肩上がりの時は、それでボロはでないんですが、前がつかえると途端に末端が血行不良を起こします。
 
 ちゃんと学んだわけではないので、間違っているかもしれませんが、トヨタの生産管理システムの本質は「なぜ? なぜ? なぜ? なぜ……?」の疑問追及にあると思っています。
 えいりあんさんもそう思われていると確信していますが、これって、小学生にもわかる(だからこそ懲りずに追及するとも言える)ごく当たり前の態度ですよね? 
 そこに思い至らず……いいや、思い至っても、時間がない、面倒だと「なぜ? なぜ……まあ、いいや」と根性倒れするところに問題があるように思います。

 だからこうなる……いら、いら。

 言い方に問題があるので勝間和代さんを嫌う人は多いですが、60億人を超えて尚増殖するホモ・サピエンスをスローライフでは養いきれないのも間違いないでしょう。市民権のある人以外を奴隷とする古代ギリシア時代にはもう戻れない……ううう、戻したがる人も出てくるか(´ヘ`;)

 などなど、愚考するから……休むに似たりになるんですけどねえ。
「いい加減に、やな奴になる覚悟をしろ、由紀夫くん。みんなに愛されるなんて無理。キリストだって過半数をとれないんだよ」

投稿: YCAT | 2009年12月19日 (土) 22:09

YCAT様、えいりあんさん初めまして。元無機化学分析屋のめしのといいます。カステ−ラさんのブログから来ました。ここにコメントするのは、かなりの勇気が必要でした。今回の早朝空腹時血糖値実験の論文には疑問があります。
1 気温は外気温となっていますが、えいりあんさんのデータは、外気温に近いものでしょうが、論文のデ−タは、病院内(空調された部屋)で取られたものではないでしょうか(血糖値が横一線なのも説明が着くと思います)。まさか空調された部屋でデ−タを取り、外気温の平均気温をプロットした?
2 相関係数=0.12では普通の実験では破棄ではないでしょうか。えいりあんさんのデータを見ると、低温時(特に15℃以下)の相関は、0.5〜6はありそうですね。

投稿: めしの | 2009年12月19日 (土) 23:46

>めしのさん

 ようこそ♪

>ここにコメントするのは、かなりの勇気が必要でした。

 ですよねー。膨大な過去ログを前に途方にくれるんですよね。

 それを乗り越えての記念すべき初コメのポイントが、ソコですか!
うう、嬉しいこと。ツボだわ(*^^*)(こういう感覚が、たぶんYCAT様と私では、全然違います。)

1について
 うちはエアコンを使わない家なので、寝室の室温は外気温とほぼ比例と考えていいでしょう。
 一方、例の論文の検査データは「クリニックで測った」ものだそうです。

2について
>低温時(特に15℃以下)の相関は、0.5〜6はありそうですね。
 そこらへんの解析結果は、次の記事に載せます。グラフはもう出来ている(最初にまとめて全部作ったので)のですが、文章がまだなのでアップできないのですよ。
決定係数0.12のところも、予定稿では「私がレフェリーなら落とすぞ」だったのですが、そのあたりの書き方でごちゃごちゃ悩むから進まないんですよね。

投稿: えいりあん | 2009年12月20日 (日) 16:51

>YCAT様

 他人のオピニオンであれ何であれ、情報の仕入先はどこであっても、要は中身が把握できればいいと思います。新聞でもTVでもネットでも。

 私自身は朝日新聞を買いませんが。(文字通りの意味でも比喩的な意味でも。)

 ただし、鮮度がモノを言う情報、たとえば医療行政の変化を追いかけるには、新聞というメディアは致命的に遅すぎます。だいたい、もう決まってからしか報道されません。

 過去数年間にわたって、親が、ガン難民となったり、あるいはリハビリ難民、療養難民、介護難民と化したために、図らずも難民化回避策や難民救済策を追い求める羽目になった私の経験から言わせていただくならば、

1)キャリアブレイン・ニュースロハス・メディカルで、どこで何が議論されたかを掴む。

2)WAM NETで、その会議体の議事録がアップされるのを待って読む。

3)同じくWAM NETまたは厚生労働省のサイトで、実際の通達などを確認する。

のが王道であると思っています。
 アクションを起こすのは、3)より前でなくては間に合いません。が、新聞報道は3)の当日か、せいぜい2~3日前です。

 もっとも、事前に動向を察知して署名運動をしたり、パブコメに投稿したり、抗議メールを送ったりしても、規定路線は何も変わりませんでしたけれどね。

 厚労省の担当課に直電して、担当者に「ああ、そうですね、これは矛盾してますね」と言わせたこともありますが、それでも変わりませんでしたから。
(これは医療ではなく介護の話です。介護保険法と現場を指導する地方自治体レベルの運営規則が矛盾しているという話)


 私はトヨタも買っていませんので、かんばん方式を例に出されると困るのですが・・・
 基本的に、天才は子どもの「なぜ?」に対して本質的に理解させてしまう(というか概念把握をさせてしまう)ことができると信じています。
 難しいことを難しく説明するのは、やさしいのですよ。
 難しいことをやさしく言うことこそ、難しい。
 アインシュタインが子どもに教えるのがとても上手だったという話は有名ですが、きっとディラックも子ども相手に不確定性原理をわからせてしまえたのだろうと想像します。

 しかし、このへんの趣味はことごとく合いませんねえ。
 朝日新聞にトヨタに勝間和代? もう勘弁して。(>_<)

投稿: えいりあん | 2009年12月20日 (日) 21:04

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