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2009年12月28日 (月)

日本版DRI(食事摂取基準):根拠の不在

えいりあん・めもらんだむ

 アメリカ/カナダDRI(食事摂取基準)を見つけた時、どうせ日本も真似しているだろー、と思った。
 欧米の潮流に背を向けて、独自路線を貫く日本糖尿病学会は、ある意味尊敬に値する。ふつーの学会や政府機関関連団体は、たいてい欧米路線を真似している。

 で、探してみた。@厚生労働省サイト。
 果たしてありましたよ、日本人の食事摂取基準(2010年版)」5月に出されたものだけれど、2010年版ですって。

 でもって炭水化物の章では、やはり脳の話を持ち出していて、その根拠としている文献はアメリカのDRIの2005年版だったり。(^▽^) これはもう片付けたから、今回は脳の話はしない。

 皆さんご存知のように、糖質はエネルギー源に過ぎないのであって、身体を形作るのに必須の成分ではない。身体が必要とするエネルギー量をまず設定して、そこから必須成分であるタンパク質と脂質のエネルギーを差し引いて、残りを糖質で賄えばいい。もちろん必須の栄養素には、必ず摂取しなくてはならない必要最少量がある。
 ・・・だけではなく、摂取可能な上限量もあるから、まあいろいろと心配の種が出てくるわけだ。

 ここらへんの栄養素の優先順位の話は、さすがお国がとりまとめた基準だけあって、はっきり書いてありますねー。

Jdritab

 本文から拾ってくると;

(p.19)優先順位は、①エネルギー②たんぱく質③脂質(% エネルギー)、④五訂増補日本食品標準成分表28)に収載されているその他の栄養素(推定平均必要量、推奨量、または目安量が策定されている栄養素)、⑤五訂増補日本食品標準成分表28)に収載されているその他の栄養素(目標量が策定されている栄養素)、⑥五訂増補日本食品標準成分表28)に収載されていない栄養素

 「炭水化物」なんて、その他大勢よ。

 ・・・と揶揄することがこの記事の目的ではないの。実は、私はこの日本版DRIにけっこう感心している。栄養素の優先順位の上記例に続いて、きちんと次のような記載があるから。

(p.19) ただし、この優先順位は固定したものではなく、対象とする個人や集団の特性や、食事摂取基準を用いる目的などに応じて変える。大切なのは、エネルギーに加えて、必要かつ十分な種類の栄養素を理論的かつ実践的に選択して用いることであり、限界も含めてその理由を説明できることである。

 限界も含めてその理由を説明できること

 現場でこれをちゃんとやってくれないから、困るのよね。

 ちなみに、冒頭の総論にも、1ページ目にはっきりと

(p.1)利用者は、算定された数値にこだわらず、食事摂取基準の考え方を十分に理解し、正しく用いることが望まれる。

エネルギー及び栄養素の「真の」望ましい摂取量は個人によって異なり、また、個人内においても変動する。そのため、「真の」望ましい摂取量は測定することも算定することもできず、その算定においても、その活用においても、確率論的な考え方が必要となる。

と記載されている。

 現場で栄養指導とやらを実践する方々は、ご自身の業界トップがこうおっしゃっているのをご存知なのかしら?

 では、炭水化物の章に行ってみましょうか。

 アメリカ/カナダ版と同様に

(p.109)ぶどう糖の必要量は少なくとも100 g/日と推定され、すなわち、消化性炭水化物の最低必要量はおよそ100 g/日と推定される。

と書いてあるものの、続けて

(p.109)しかし、これは真に必要な最低量を意味するものではない。肝臓は必要に応じて、筋肉から放出された乳酸やアミノ酸、脂肪組織から放出されたグリセロールを利用して糖新生を行い、血中にぶどう糖を供給するからである。

と書いてある。

 わかってるじゃん♪

 カーボカウントを推奨しながら、ADA(アメリカ糖尿病協会)がこう言った、ああ言ったと勧告の数字だけを受け売りする人より、この日本版DRIの著者たちのほうがよほど本質を理解していると思う。

 ついでに

(p.109-110)平成17 年及び18 年国民健康・栄養調査5,6)によると、100 g/日未満の摂取量を示したものは成人男性、成人女性それぞれおよそ0. 8% と1. 4% である。

ですって。
 これって糖質制限派? アトキンス・ダイエッター? それとも減量中のボクサーとか大会前のボディビルダーかしら? あるいはアノレキシア? ま、100人にひとりくらいはお仲間が居るってことで。(^-^)\

 おっと、摂取の上限量の話をするんだった。

 一応、自分自身に相当するようなエネルギー所要量を見積もって、タンパク質と脂質の上限量らしい数字ないしパーセンテージを引いてみる。・・・40 %余る。私は、糖質こんなに食べられない。

 次に考えるのは、この数字の根拠は?ってこと。上限量「らしい」と書いたのは、そこがあゃしい から。

 たんぱく質にも脂質にも、「耐容上限量」(過剰摂取により健康障害が生じるとされる量)は定められていない。

(p.69)たんぱく質の耐容上限量は、たんぱく質の過剰摂取により生じる健康障害を根拠に設定されなければならない。しかし現時点では、たんぱく質の耐容上限量を策定し得る明確な根拠となる報告は十分には見当たらない。そこで、耐容上限量は設定しないこととした。

(p.77)各脂質の推定平均必要量、推奨量、耐容上限量を算定できるだけの科学的根拠がないので、目安量と目標量を設定する。

 たんぱく質については、それでも一応、

(p.69成人においては年齢にかかわらず、たんぱく質摂取は2. 0 g/kg 体重/日未満に留めるのが適当である。

ということになっている。その理由としては、

(p.69)しかし、40 歳以下の健康な成人に1. 9~2. 2 g/kg 体重/日のたんぱく質を一定期間摂取させると、インスリンの感受性低下、酸・シュウ酸塩・カルシウムの尿排泄増加、糸球体ろ過量の増加、骨吸収の増加、血漿グルタミン濃度の低下などの好ましくない代謝変化が生じることが報告されている68)。また、65 歳以上の男性に2g/kg 体重/ 日以上のたんぱく質を摂取させると、血中尿素窒素が10. 7 mmol/L 以上に上昇し、高窒素血症が発症することが報告されている69)。

と2報の文献を挙げている。

 たんぱく質摂取上限として適当な量を示す基になったデータが、どの程度のものなのか。
 (日本人の食事摂取基準の執筆者らが明確な根拠にはならないと言っているくらいのものだけれど)妥当だと納得して従うか、それとも自分自身には当てはまらないと考えて棄却するか。

 68)の文献は、これ⇒ Metges CC, Barth CA. Metabolic consequences of a high density?protein intake in adulthood: assessment of the available evidence. J. Nutr., 130, 886-9 (2000).、69)のほうはアブストラクトだけですが、ここ⇒Klein CJ, Stanek GS, Wiles CE 3rd. Overfeeding macronutrients to critically ill adults:metabolic complications. J. Am. Diet. Assoc., 98, 795-806 (1998).

 私からのサービスは、ここまで。あとは、それぞれのご判断でお願いします。

copyright (c)2009- えいりあん
 転載厳禁。引用の際は、ブログ「血糖を管理する日々」に言及の上、リンクを張ってください。

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