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2009年8月25日 (火)

お粗末。蛋白質の血糖上昇は、どれが本当?

09081003a
 これは、よく引用されるおなじみの図。p17。
 使用しているのは、京都医療センター 小林 副看護師長。
 坂根先生も使っているから、鵜呑みなんだろう。
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 小野百合内科クリニックの佐藤舞子さんのp21の図。職種不明。
 院長先生が書いた『よくわかるカーボカウント』p47の図と同じもの。
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 これは京都大学医学部附属病院 幣栄養管理室長。p27。
 データを持っていらして、それをイメージ化したらしいが、カーボ/蛋白/脂質の比率が明記されていないから、なんとでも言い抜けできるっていうか……おいおい、そんなアバウトな話で、指導されたら、医療従事者はどうしたらいいんだ? 

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 2009/5月 中外医学社 刊。
『はじめてのカーボカウント』
 京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室の坂根直樹室長(糖尿病専門医)と佐野喜子(管理栄養士)のコンビによる編著。
 ADA(アメリカ糖尿病協会)編: 糖尿病患者のためのカーボカウント完全ガイドの監訳者でもある。
 しかし……。
 『よくわかるカーボカウント』の時から、あれえ? と思ってはいたけれど、この編集ぶりからすると、うううん。
 どうも、わかっているわけじゃないみたいだ(´ヘ`;)
09081002a
 これは巻末資料編「カーボカウント指導パンフレット」の図。
 坂根先生の立場としては、これを正解だとしているんだろうね。
 意見の相違があるのはしょうがない。
 だが、他の筆者と見解が違っているなら、それに触れなければ編集責任者である意味がない。
 混乱をまきちらして、どうする! 

 そもそもの話、実はこの図の根拠となったデータはない。
 ……どうやって作ったんだろうね? 
 2005年刊『ジョスリン糖尿病学14th』(2007年訳 日本語版題名は第2版)のp696-697「蛋白質とブドウ糖濃度」では、よくわからないと言いつつ、Franzの理論を紹介するにとどまっている。
 "Protein controversies in diabetes"
  Diabetes Spectrum2000

 蛋白質からブドウ糖への変換は、実際には50-60%であるが、このブドウ糖は血液循環に入らない。蛋白質からの糖新生は24時間以上かけてゆっくり起こり、ブドウ糖はこの長い時間で使用される。

 50-60%と数字は確かに一致しているけど、血糖値とは相関しない? だよ。

 天理よろづ相談所病院 辻井糖尿病センター長「カーボカウントの理論的根拠は?」p70の記事は、この見解に近い。

 インスリンが十分にある限り食事由来のたんぱく質からのブドウ糖産生はグリコーゲン蓄積などブドウ糖(グルコース)利用に相殺されて血糖値の上昇には結びつかないと考えられる。

 これは50g(少ない!)の脂身のない牛肉を食べての検証による。
 <注>巨大なワラジ大ビーフステーキや、
     焼肉ロース(カルビでも同じだけど)ドカ食いは、
     また別な話。それはそれで血糖値に影響してしまう。
     あくまで普通の人が普通量の蛋白摂取での話。

「だから、イメージって断っているでしょ」って言うの? 
 ……おおおおお~い(´ヘ`;)

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 これは『よくわかるカーボカウント』p59で、東京女子医科大学内潟安子教授が、肥満していない(インスリン抵抗性のない)、血糖コントロール良好な社会人の1型患者から学んだという概念図。
 毎日毎食インスリンを打って食後血糖値測定をしている方たちのデータで、かつインスリン抵抗性がない(肥満していない)条件でのデータ。
 これは、ジョスリンの見解、辻井先生の見解に近く、杉本先生が、実際に患者さんたちに血糖測定をお願いして調べたデータと、極めて相似している。
 ……ってか、実際に、耐糖能異常(IGT)者が測定すれば、だいたいこうなるのだ。
 結局、坂根先生も実際の患者の血糖値を見ていないのか? 

 海外と違って日本ではSMBG(血糖自己測定)は医療行為とされており、合併症前段階の患者にもっとも身近な栄養士さんたちは、このデータ(摂取食事量の代謝フィードバック)に直接関わることが難しい。
 それが原因なのか、SMBG(血糖自己測定)を含めた自己管理に積極的な患者がいても、対応できる栄養士さんが実に少ないのは残念なことである。
 だからといって、都合のいい数字だけ持ってきて、従来の思考を補強し、あまつさえ、カーボカウント解説書で誤解を広めようとするのは、問題外だろう。
 西雅美(職種不明) 「カーボカウントの落とし穴とは?」p38の記事はその典型。

ADA(アメリカ糖尿病学会)が、1日130g以上の炭水化物摂取を推奨している。

 元ネタは幣京都大学医学部附属病院栄養管理室長が書かれているADAのNutrition Recommendations and Intervention for Diabetes-2006(Diabetes Care)なのだろうが、訳が微妙に違う。
 「1日130g以下の低炭水化物食は推奨できない」とエビデンスレベルで注意喚起されて

 どっちでも取れそうな英文なのかもしれないが、だからといって、どうして「指示エネルギーの50-60%は炭水化物から摂取することが望ましい」となるのだろう?
 <130g以上推奨>と理解しているからそうなったのか、習った糖尿病食事栄養比で推奨カーボ比60%であるべきという固定観念から、そう訳してしまったのか?
 どっちだ? 
 我田引水は宿命的愚行。別名「馬鹿の一つ覚え」

 2009/09/02追記
 The National Academies PressDRIレポート2005年版
Dietary Reference Intakes for Energy, Carbohydrate, Fiber, Fat, Fatty Acids, Cholesterol, Protein, and Amino Acids (Macronutrients)
えいりあんさんがコメント欄で紹介してくれた。これはADA勧告の元ネタで間違いなかろう。第6章が該当するが、ざっと眺めた感じでは(読めるもんか)1331ページ全部読むべきみたい。
 ……気が遠くなる(´ヘ`;)

 で、やっぱり「130g/日以下を推奨しない」が正解みたいだ。
 それどころか、えいりあんさんによれば、健康な内臓を維持して、糖新生可能な蛋白質、脂質を必要量摂取できるなら、ゼロでダメって証拠はないんだそうだ。
 どっちが正しいかはともかく、そんな文章を無視して正しいふりで「130g以上推奨」なんて押し付けるのは、とんでもない話である。
 これは文芸春秋2006/6月号で保坂正康さんが『新・昭和史七つの謎』で呆れている事情と同じ。
 経済封鎖(ABCD包囲陣)――石油が手に入らない。飛行機を飛ばせない! それが開戦にいたる直接のきっかけだけど、その石油備蓄について、誰も正確なデータを知らなかった――だけじゃなく、そもそも知ろうとしなかったって。
 あれえ……これって豊臣秀吉の朝鮮侵略と同じ発想かも。
「メシは、むこうで探せ。……どうにかなるさ……して」

 130gのカーボは、4kcal/gカロリー換算で520kcal摂取となる。
 このエビデンスの根拠はどこにも示されていないが、1982甲状腺ホルモンの機能低下についての研究がそれっぽい。

 ↑ 2009/09/02追記 
 これじゃなかったみたいです。すいません。

 ちょっと計算してみればわかる馬鹿な話である。
 <以上>ではなく<以下はダメ>と考えて、1日当りの必要エネルギー量に引き当てると……。

 520/1200kcal=構成比43%
 520/1500kcal=構成比34%
 520/1800kcal=構成比29% 

 摂取食事エネルギー量を1200kcal/日と推奨されるのは、ちびっこくって、なにもしない<生活強度の低い>高齢女子の方がほとんど。
 その場合でも50%以下となる。
 これを逆算して推奨どおり60%摂取するとすれば、カーボを180g/日も摂取することになる。
 すい臓が活発でインスリンがたっぷり分泌されているならいいけど、そうじゃない方が多い。
 その場合、カーボだけ摂取(遅延要素なし――つまり、果物やせんべい)すると、一食当り、40g以下でなければ食後高血糖になる方が多い。
 少なくとも5回に分けて食べなければ、ヘモグロビンA1cは上昇するであろう。これを裏付けるには、相当数の検証が必要だけど、ほぼ正解だと私は思っている。
 鵜呑みにしろとは言わないけれど、そうかしら? 調べてみようかしら? くらい思ってもいいんじゃないか? 
 
 高齢女子が、胃の負担軽減もあって、さっぱりカーボを食べることに専念したら、必然的に摂取蛋白質/脂質は減ってしまう。これが、骨粗しょう症の原因となったり、体力減少につながっていたとしても、驚くには当るまい。筋肉の減少にともない歩くこともままならない(生活強度減少→血糖消費能力減退)方は多い。
 そこへ杓子定規に60%カーボ介護食を与えられたら? 
 杉本先生の事例は、別に珍しい話じゃないのだ。
 高血糖にされて、それを消費するための生活強度を低下させられ、老後の楽しみは糖尿病合併症による失明の<闇の世界>のファンタジーを楽しめって? 冗談じゃない(´ヘ`;)
 閑話休題。

 西さんは、京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室で、坂根先生の下で働かれていて、1型糖尿病研究をされているらしい。栄養士さんじゃなさそうだが……。

 血糖測定データを見ろよ! 

 SMBG(血糖自己測定)データが研究材料のはずだよね? 長年、日本の糖尿病食事療法の主流概念に<石頭>化されて、患者の病態を無視することに慣れきった栄養士さんより、その意味では、もっと性質(たち)が悪いってことになるんじゃないか?
 おおおい、もっと勉強しろぉおおおおおおおおおおおおお。

 余談。
 三大栄養素って概念自体が、そもそも間違っているのかもしれない。どんなに長年言い伝えられてこようと、たとえ大勢の人が信じていようと、古(いにしえ)の言葉は<真理>であるとは限らず、だいたいが<遺物/障害>である方が、一般的だもんね。
 多数派が<真理>とは限らない。神の法則は、民主主義には左右されないのだ。地上の我々が決めた定義は、どこまでいっても仮定でしかなく、そこを見直せば、見方が変わる場合は多い。習ってきたことが全部無駄ってわかるのは淋しい話だけど、君子は豹変すべきなのだ。
 難関の資格取得者に、長年それで支障がなかった業務に関わってきた人ほど、アバウトになれないのは気持ちとして理解できる。
 君子(自分の意思で概念を変えられる王様)になるのは簡単じゃない。自信がなければ自己決断はできず、自信は豊富な学習、経験がなければ生まれない。

 勉強してますかぁ? 

 蛋白質と脂質は、人体(筋肉、血管、そもそも細胞構成物として)を構成する上で、絶対必要なものだ。
 でもカーボ――この場合は、食物繊維(体内吸収しないゴミ)を含めた炭水化物は、人体を構成するものではない。
 体内で製造できない必須脂質と必須アミノ酸はあるが、必須炭水化物があるって研究は、まだどこにもない。
 ビタミンや微小金属類も構成物そのものではないし、量が多すぎれば害となることもある危険物だけど、体内での化学反応上なくてはならないものであることはわかっている。

 自動車や飛行機のような内燃機関に例えれば、ガソリン(エネルギー)がなくても、構成物(鉄、プラスティック、電線)さえあれば、存在はできる。
 それを<生きている>と呼べるかどうかは、別の問題だけど、構成物だけを<栄養素>とカテゴライズすれば、カーボカウントの本質が見えるかもしれない。
 
 <活動の原動力>となる食物を、栄養素と見るのはやめちまえ!

 エネルギー(カーボ、ガソリン)がなければ、車は動かない!
 必須栄養素と呼ばなくても、エネルギーは必須なのだ!?

 脂質が生命活動の中心を担っているという文学的表現もあるけれど、そもそもそれ自体、生命進化の過程で、光合成で誕生したカーボを貯蔵用に圧縮(4kcal/g→9kcal/g)できるようになったおかげの話なのよね。
 基礎代謝のほとんどを占める内臓の不随意筋を、いつ食べられるかわかりゃしないカーボのエネルギー任せにしたら、昆虫類同様、すぐ死ぬはめになるだろう。
 脂質利用であるからこその長命だ。
 脳味噌は……。
 これも不随意筋みたいなもんだよなあ。
 鍛えても鍛えても、走るようにも跳ぶようにもコントロールできない。どうかすると……。
「そりゃ休んでいるようなもんだね、寝たら?」なんて言われちまう。
 筋肉じゃないけど、休めとも働けとも命令できない<勝手>器官。
 ここに摂取食事と肝臓の糖新生で得たブドウ糖(グルコース)を、ちびっとずつ、常に切らさないように送らせるシステムっては、まことにまことに<神>の奇跡。
 いったいどんな微生物の生化学反応が、ヒトを含めた脳を持つ生き物に組み込まれたのだろう? 
 この変化が、進化かなのかどうか。それはわからんけど(´ヘ`;)十分なカーボでなく、ケトン体でも代用が効くってところは、こんな思考が役に立たないのと同様、「生きのびりゃそれでいいじゃないか」って神様の声が聞こえそうで興味深い。
 ふん、オカミなんてキライだ(´ヘ`;)

 ……ただの思いつきです。
 でも、パラダイムチェンジはこんなところから始まったりする。
 言ってみるだけ、言っておこうっと(^!^)

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