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2009年8月25日 (火)

8年前のカーボカウント先覚者

09081001 東京新宿紀伊国屋書店で、古書発見……いや、新書なんだけど、よくも断裁処分されずに残っていたものだ。
「カーボカウント食法」と題して、解説がある! 
 奥付を見ると、びっくり仰天の平成14年(2001年)発行。これは河合雅幸さんの「炭水化物管理」紹介より、ずっと早い。
 ADA(アメリカ糖尿病学会)とアメリカ栄養士会が1995年に共同発行した内容を丸々紹介しているのは、製薬会社の旧ダイナボット(現在はアボットジャパン)の学術情報担当 有澤正子さん。
 血糖自己測定を推奨するところはRD(アメリカ登録栄養士)資格を持っているだけあると思うんだけど、なぜか「通常は必要エネルギーの50-60%を炭水化物(カーボ)で摂取する」なんて書いている。
 ありえない(´ヘ`;)
 誰かが添削したのかしら? それとも日本の管理栄養士の資格も持っているから、本人の固定観念?  
 日本の医療制度では、推奨しても、SMBG(血糖自己測定)の保険適用を受けられる方が限定されるから、中途半端になってしまったのか、あるいは、同時期にカーボ拒否のアトキンスダイエットブームが来ちゃって、陰に隠れちゃったのか? 
 発行元は株式会社チーム医療で、新しい糖尿病の食事・栄養療法で、まだ買えるけど、もう買う意味はない……って、どうしておいらは買うんだろ? 

 監修されているのは、細谷憲政東京大学名誉教授と、馬場茂明神戸大学名誉教授。
 どちらもすでに引退されてしまっているようだ。
 馬場先生は、国際糖尿病教育学習研究所の理事長でもあったらしい。あまり聞かない団体だから、結局、国税の無駄遣い機関で終わってしまったのだろう。
 紹介しているカーボカウント(炭水化物のうちの糖質管理による血糖管理)が普及しない限り、糖尿病教育学習の効果なんて「がんばれ」「がまんせい」と説教するしか手がないんだから、どこまで行っても宗教布教活動並みで……名が知られるはずもないわね(´ヘ`;)。
 日本の伝統的食習慣重視で、能書きを唱えるばかりで、そもそもカーボカウント――食後血糖値を測定するって意識がない様子だから、整合性が確保されない以上、現場に浸透するわけがない。
 栄養士業界の宿命かってえと、そうでもない。
 中村丁次 聖マリアンナ医科大学病院栄養部長は、一律にカーボ摂取比を決めるのは間違っているって、アメリカの動向をちゃんと見ている。
 
 問題は、細谷先生。
 馬場先生と、中村部長、それぞれに代表される見解の相違をなぜ統一しようとしなかったのか? 
 時代が早すぎて、ネット上に業績が出てこないので、専門を調べることができない。
 ン?
 財団法人日本健康・栄養食品協会の理事長!?
 医療業界ではなさそう――ひょっとして、諸悪の根源、日本栄養学会(いろんなのがあるけど)の親玉のおひとり?
 日本健康・栄養食品協会ってのは、健康補助食品に 「JHFAマーク」与えている厚生労働省医薬食品局食品安全部管理下の財団法人。
 理事が34人もいる! たくさん給料をとっているんだろうね。 
 言われてみれば、確かに食品の外装にJHFAマークがある!
 食品保健指導士ってのは普及しそこねているようだが、ここは例のトクホ(特定保健用食品)の認定機関でもあった! 
 食物繊維戦略にも書いたように、糖尿病学会とは何かと縁がありそうな団体。
 池田義雄先生の狙い通り、血糖値に対する関心は高まったが、今となっては、トクホをたっぷり呑んで、暴飲暴食しよう! の誤解の元凶のようなもの。
 内臓脂肪増加の免罪符? 
 呑んだだけで、天国への道が開けるわけがないのに、魔法の薬一発。それだけあれば許される免罪符で、答え一発の方が、誰だって好き。
 時間をかけてバランス管理するなんて、およそ面倒くさい。
 それで商売繁盛の会社がたくさんできたし、理解されない研究をしても疲れるだけだし、私の人生ももう終着駅。そんなこんなで、余計な啓発活動、努力を断念したのかしらねえ……。
 閑話休題。
 
 タイトルにふさわしく、発想、目の付け所は、すばらしい。  

糖尿病の食事療法に疑問を抱く人は少なくない。糖尿病の食事指導は、摂取エネルギーを制限し、食事内容は食品交換表を用いて、生材料から献立・調理することにしている。この場合、栄養価計算が面倒というばかりではなく、その正当性についても疑問がもたれている。

 このまえがきを読む限り、わかっているじゃない先生! 
現在国際的には、栄養問題の取り組み方は、180度逆転している。(中略)食べ物・栄養という取り組み方は、栄養素欠乏症を解消するための手立てであった。

 そうそう。
生活習慣病誘発の危険要因を低減・除去していくには、身体側面から取り組む人間栄養(学)が必要になってきた。

 そこで「人間栄養学の立場からの糖尿病食事療法の考察」という記事を書かれたようだ。性別年代別の安静時代謝のデータには驚嘆するしかない。杉山みち子 国立健康・栄養研究所応用栄養研究部臨床栄養管理研究室長が、その裏づけ記事を書いている。
栄養所要量の基礎代謝基準値のもとになっているエビデンスは(中略)主に1950-1966年に約50報文に掲載された6500例のダグラスバック法での実測値であり、約40年以上も前の日本人が対象であることから、体組成も、栄養状態も、食事摂取量や内容も、現代人とはことなっている。

 ひえええ(´ヘ`;) 計算式が個人個人の差を無視している以前に、係数そのものが信用できないってんですか? 
 当時、携帯用簡易熱量計 Metavine なる道具を使って、個体差を明確にしようとする流れがあったようだ。これで、易学(ベテラン辻占い)から、せめて疫学(数字いじりの空想)に近いところまで、栄養学の科学性を高め、デタラメから抜出そう! 

 実際に測定した結果、その実測値と計算式の間には、50-190%まで、実に幅広く誤差が分布しているって状況が、グラフになっている。
 縦軸の説明がないので、わかりにくいけど、方向としては間違っていないように見える。

 なぜか、研究は、ここで頓挫してしまったらしい。
 現在、ネットで<基礎代謝 測定 方法>でググっても、出てくるのは、この本で馬鹿にされている毎度おなじみの計算式だけ。この基礎代謝データの多様性が正しいとすれば、この公式は、参考にする程度はいいが、あてにすると害悪となるだけのしろものであろう。それは、骨が太い人も、肉体労働者も病人も一緒くたに基準化しているBMI(体重/体格指数)同様。

 この器械を使って、私も測定したい!
 びっくり仰天で探してみたが、どこにもなさそう。唯一見つけたのはメタボリックアナライザーなる医療機器。医療機器として認可も得ているんだから、ダメな手法とは思えないし、ぜひ使ってみたいものだけど、実際はどうなんだろう? 
 ご存知の方は、情報よろしくお願い致します。

 私たちの体は指紋のような個体差のある代謝を持っています。その代謝は私たちが意図して運動をせずに安静にしている状態での体内で燃焼させるエネルギー量、つまり安静時代謝です。この代謝は日常生活の総消費カロリーの75%前後を占めます。自身の代謝量を知ることからすべてが始まります。

 おお、ごもっとも! 
 代謝量を推定する多くの公式がありますが、残念なことにこれらの公式による推定では、1日あたりで500kcal以上の誤差があります。通常燃焼されるカロリーより1日に200kcal多く食べると1年につき9キロの体重増加となります。

 そうなのよ(´ヘ`;) この見解は、実体験から正解と言える。
 これを基礎にできないからこそ、とりあえず食事制限は厳しければ厳しいほど安全という発想になってしまう。
 食わなきゃ痩せるの事実だが、エンジン(代謝)の容量をちゃんと調べずに、注ぎ込むガソリンの量で調節しようとすれば、どうしても控えめになってしまう。
 タンクからあふれないようにするのが、もっとも確実だもん。
 それを言いつけるのは簡単。
 でもエンジンが想像より大きければ、ガス欠に苦しむ羽目になる。
「どうして、こんなにはらが減るの(´ヘ`;)」

 呼気――つまり、血液が体内を循環して集めてきたガス(窒素だと思う)を分析すれば、代謝量がわかるってアイデアは間違っていないと思う。
 24時間密室に閉じ込めて調べる云々って記事を、どこかで見たような気がしたが、今回見つけられなかった。あれも、たしか呼気ガスでの判定だったと思う。
 睡眠時限定のBM(基礎代謝 basal metabolism)測定ってのも、24時間拘束同様、実施困難なので、安静時間15分以上、測定時間3分以上のREE(安静時代謝 resting energy expenditure)で代替しよう! 
 それが当時のアイデアで、2001年当時、120ヶ所以上の医療、保健、福祉の現場及び研究機関で活用されているとあるのだが……。
 なぜ、普及していないのだろう? 
 信憑性に問題があった? それともコスト的問題?
 よくわからん。 

 最近体重計で、基礎代謝量を測定できる機種はあるけれど、あれは実際にそれぞれの人体ごとの正確な測定をしているわけじゃない。
 単に、マイコンに仕込まれた(古くて、おおざっぱな)標準データに、個別の体重や通電による体脂肪データを組み合わせて、換算しているだけの話。あてになる代物じゃない。
 摂食量と運動量に、その代謝後の結果である体重、体脂肪で、推定はできるけど……ダイエットにしろ、耐糖能異常(IGT)管理にしろ、基礎データを知ることが第一歩のはずなんだけど……。
 SMBG(血糖自己測定)機器のように、毎日使用するものじゃないし、体調にすぐ響くようなデータでもないから、たくさんは売れないだろうなあ。となると、コストダウンはおよそ無理だろう(´ヘ`;)。

 閑話休題。
 かくして、早すぎた紹介は専門家の間で広まらず、ネット普及前夜、一般人の口に上ることもなく、いつのまにやら埋もれてしまったのでした。
 ……同じことは、繰り返されないであろう。
 たぶん、きっと、いや、今度こそ。

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