カーボカウンティング実践ガイド
医薬ジャーナル社
2008/05/30刊
3,360円 杉本正毅編
医師と栄養士と患者のためのカーボカウンティング実践ガイド
これはみんなの糖尿病ストーリーの杉本先生が短納期で渾身の力でまとめた本。
カーボカウントのエビデンスへの疑問はよく聞くが、じゃあ食品交換表のエビデンスってあるの? って設問には意表をつかれた。
一瞬、首をひねったが答えはある。
神話は信じるものであって真偽を問う次元のものではない。
渡邉昌栄養研究所理事長のように、作ってくれる人がいて、かつ空腹感に耐えられるなら食品交換表でもうまく行く。
食わなきゃ神話は成立するのだ。
実際、ダメというエビデンスもなく、ここはP31一政晶子さんの説明が有効だろう。
糖尿病向けのレシピには、カロリーや食塩量のみで食品交換表の単位が示されていないものをよく目にします。(略)美容や健康のためのダイエットをしている人の食事法と同じになってしまいます。(略)表示されていないのは、糖尿病を持つ人たちに食品交換表が受け入れられていない証拠かもしれません。一方、米国で見られる糖尿病向けのレシピには、少なくともカロリーと炭水化物(YCAT注→カーボ 糖質&食物繊維)が示されています。
患者向けにはちょいと難しい。
特に How to を求めると、つらい。アメリカ版なのでちょいと意訳しなきゃいけないが糖尿病患者のためのカーボカウント完全ガイドの方が、ノウハウを自然に吸収できそうだ。その際、あれ? とか、なぜ? とかの疑問を感じるようなら、ここに回答がある。
私が数年かかってネットサーフィンした資料がほぼ揃っていて、それについてのコメントが付いているわけだから……後から来る人はラクチンでいいなあ。
日本の半導体産業は壊滅寸前なんだよ、サムスン(三星電子)さん。
巻末の討論<わが国における糖尿病栄養療法の課題とカーボカウンティングの果たす役割>は興味深い。杉本先生は、これに感動されているようだが、私は絶望を感じている。日米における<栄養士>の概念の違い にその辺をまとめた。
時代がカーボカウントを呼ぶか?でも書いたが、血糖値自己測定の普及がブレイクスルー(突破口)になるのを期待するばかりだ。
P57 管理栄養士の森川さん P79 1型患者であり代謝内科医でもある黒田先生 P180 インスリン使用の2型患者の高野さん
それぞれカーボと血糖変動の関連に気づいたのがカーボカウントへの動機となっている。
それは、偶然の一致ではないのだ。
時間に追われたせいもあろうが、本書はアメリカ方式のカーボ/インスリン換算と日本の大阪市立大学方式併用スタイルになっている。
1カーボが10gなのか15gなのか?
教える側には都合があるだろうが、患者サイドからすれば、実は、どっちだってかまわないと私は思っている。
大阪市立大学では1型の小児患者が多く、生理食塩水で希釈して投与インスリンを細かく調節されている。だが成人患者は整数単位での投与が普通だ。そしてP31で管理栄養士の一政さんが紹介しているように、アメリカの指導はアバウトだ。不真面目? とタイトルしているが、きっちりカーボ量を測定してみたところで、その処理が煮ているのか焼いているのか、水に溶けているのか固形なのか――つまりはGI値の高低、そしてゆっくり噛むのか飲み込んだのか? さらには、成分表のデータ自体が、旬なのかどうか、また産地によっても変動する。
加工食品の方が成分表があってかなり正確性を期待できるが、それでも許容範囲±20%の世界だ。真面目にやる方がバカを見る。
そして各自ごとの代謝能力。それはインスリンの作用以外にも、吸収力と消化力と血糖化した後の消費力と中性脂肪への変換率の総和となる。
それでも細かくこだわる?
閑話休題。
1カーボの定義問題はさておいて、忠告をひとつ。
この本を読む場合、目次に従って、執筆ページごとに著者をメモ書きしておくことをお勧めする。
(私はインデックスシールを貼った)
杉本先生が一括編集ということなのだろうが、医師と栄養士と患者。アメリカサイドと日本サイド。ダブっているのはかまわないが、微妙に観点が違っているので混乱しかねない。
大丈夫かな?
もう一つ難問がある。
それは医師の栄養学知識と血糖管理ノウハウの欠如問題だ。
結局、自身が患者にならなければ――実際に体験しなければQOL(生活の質)にそった本当の代謝管理を表現することは難しいのかもしれない。
再考の上、あとで別記事にします。
その意味でも長年患者として血糖管理につきあい、インスリンポンプを装着して新発見をした医師、黒田先生の<強化インスリン療法を支援するカーボカウンティング>と<カーボカウンティング実践者の声……日本から>が、もっとも読み応えがある。
管理栄養士の佐野さんのP132 2型患者に対するカーボカウンティングもそれなりに読めるんだが……あと一歩踏み込んでもらいたい。
そんな気持ちが残るが、自分から情報収集し行動しないような患者に対しては、これがいっぱいいっぱいなのかもしれない。
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コメント
もう読まれたんですね~速い!
私は手元にあっても、なかなか読むまで時間がかかります。
私は難しいことも理屈も理解がなかなか出来ないので、分からないですが。YCATさんの・・・「結局、自身が患者にならなければ――実際に体験しなければQOL(生活の質)にそった本当の代謝管理を表現することは難しいのかもしれない」は本当に同感です。
実際カーボカウントはめんどいので、興味が持てないと思われてしまっている患者さんも居ます。
本来はもっと学ばないと・・・そこまで気持ちが乗らないようです。
もったいないですよね。
もっと簡潔にいかないものでしょうか?
私もカーボはもちろん意識していますが・・テキトーですよ。
だから人には教えたりは出来ないです。
それでも、、、何も知らないよりは血糖管理は良くなっていますから。
だいたいで良いとも思うんです。
本当に簡単なカーボカウントを・・・・
投稿: ちょここ | 2008年6月 8日 (日) 09時44分
こんばんは、ちょここさん。
どっちにしろ試行錯誤の繰り返しになるんですから、きっちりなんてできやしない。
ヘモグロビンA1c5.0以下を狙って、きちきちにカウントして、投与インスリン過剰になって、低血糖を起こしている1型の方たちを見ていると危なっかしくてしょうがありません。
重要なのは合併症を起こさないことであって、血糖値を下げることが全てじゃなく、ちょっと高めくらいの方が安全なはずですが、患者心理としてはなかなかそうもいかないんですよね。
自己分泌があって、最終的にはなんとかなると、私のように食後血糖値200越えに、シラっとしているのも困ったもんですけどね。
(おいらだって、低い方が気持ちいいんだけどさ)
投稿: (管) | 2008年6月 9日 (月) 00時04分
カーボカウントは食品交換表に比べればずっと計算が楽だと私は思っていますけれど、それでも、そういう計算以前の糖尿病の患者の人たちの方が多いんじゃないでしょうか。
うちの叔父が最近糖尿病と診断されたんですけれど、自分で料理しない人ですから「そばはあんまり良くないんだって? じゃあ、ごはんはいいのかな?」というレベルでしたから。
でも、こういう人に対して、たとえば「そばもごはんも、これまで食べていた量の半分にしましょうね」という栄養指導でも、それは立派なカーボカウントだと思いますけどね。
投稿: すずらん | 2008年6月13日 (金) 12時39分
ボストンって北海道みたいなんですねえ、すずらんさん。緯度的に同じだから、そんなものなんでしょうか。梅雨はないんですよね?
ゴキブリもいないのかな?
東京は異常に気温が低い日が続いており、5月中旬、ゴミ集積所でぼううっとしている奴を見ただけで、まだ家の中への侵入者には遭遇しておりません。
陽射しを浴びてのぼせ上がって動かないバンコクのゴキブリには、愛らしさを感じてしまったりもしたのに、どうして東京のゴキは憎々しいんでしょ(´ヘ`;) せこせこ逃げる、その卑屈さが不愉快なんじゃヒラメサラリーマン! ……ってことは自己嫌悪なのか?
閑話休題。
佐伯式栄養表の<黄色/エネルギーになるもの>って、中学校で見たような記憶があるのですが、以降お目にかからず。叔父さんの年齢が30歳以前とは思えないので、やっぱり遠い昔、はるかかなたの記憶でしかないんでしょうね。
「炭水化物とはなんぞや?」から教えなきゃいかんとお嘆きの先生もいらっしゃるようですから、とりあえず下記指導はありでしょう。
>「そばもごはんも、
>これまで食べていた量の半分にしましょうね」
プラス揚げ物は、衣(ころも)をはがして。
それが従来の栄養指導の基本だったように思います。表1表2チェックですね。
それで、うまく行かない人ばかりなのはなぜか?
自己血糖測定をしなかったからですよね。
2時間くらいかけて食事すればいいんだけど、そうもいかない日本人。インスリンが分泌されればされるほど空腹感を刺激される場合も多いので、ついつい気がゆるみ、結果的に、カーボ自己処理能力以上に食べてしまう。あるいは、血糖消費のために食後動くべきなのに、牛になって笑っている。
衣(ころも)が危険なのは、吸収している揚げ油(脂質)じゃなく、吸収役の小麦粉/パン粉の方だったなんてのも、測定経験のない栄養士さんにはわかりっこない(´ヘ`;)話です。
投稿: (管) | 2008年6月13日 (金) 16時01分