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2007年10月 7日 (日)

文芸春秋雑感-2 疫学の存在価値

 まったくえらいものと格闘する羽目になってしまった(´ヘ`;)
 
変な国・日本の禁煙原理主義』は、解剖学者養老さんと劇作家山崎さんの無茶苦茶放言だらけの対談。猛威を振るった結核の激減が、抗生物質のせいじゃなく栄養の改善だなんて、びっくりと同時に、うなづいちゃう発言もあるが、日本禁煙学会がカンカンらしい。
 ヘビースモーカーの私としては、歓迎する部分もあるけれど、長生き期待読者向け<最高の医療>特集と同じ号に掲載するほどの狙いは、どこにある? 

山崎「それにしても、なぜ現代人はこれほどまでに健康至上主義に夢中になっているのでしょう」 (中略) 養老「60歳を過ぎて健康に気をつけても仕方がない。勝手にしてればいいんですよ」

 
 弾丸が飛びかうわけでもなし、コンビニのゴミ箱には期限切れ弁当があふれ、ホームレスは備品完備のダンボールハウスの中で、メタボってる。(注-金欠、情報欠ほどカーボ過剰になる)
 70歳を越えてばりばり仕事しているお二人と違って、<健康>ぐらいしか趣味をもてない人はたくさんいる。平和ボケのどこが悪い!
 一所懸命<健康道>を邁進して、それが原因で死んだら本望ってもんだ……あれ?
 
 単純に、編集部がお二人の参加も面白いと企画したら、暴走されちゃったのかな? 没にするとあとが怖いし。
 
 山崎「(略)昔は中年男性の腹が出てでっぷりしてくると貫禄があるとほめたものですが、いまは<お前はメタボだ。なぜ節制しないか>と言われてしまう」に見るように、山崎さんは、知識不足と言われてもしょうがないだろう。
 同じ号掲載の日野原さんが長年努力されて変えた経緯をご存じないようで、前段の養老「(略)勝手に回復するはずの体が壊れてくるのが、いわゆる生活習慣病です。これは治す手立てがありません」を、山崎「(略)<成人病は>いつのまにか<生活習慣に起因する病>と名を変えた。こうなると、患者の自己責任になりますから、お医者さんは気分的に救われただろうと思います(略)」などと受けたりしちゃいけない。
 古き<医師全能主義>感覚のままだ。幸福だなあ。
 
 養老さんの発言には驚かされることばかりだが、明確な間違いはない。それにしても、あまりにあまりなので、いろいろ養老さんの本を読み返してみた。……そこで衝突したのが、ううううむ、別荘が建ったベストセラー『バカの壁』なのであった。
07100755 こいつは一見すごく読みやすい。
 うなづける部分も多いから立ち読みしてすぐ買っちゃう代物で、ベストセラーになってなにも不思議はない。しかし、困ったことに、読了しても趣旨がよくわからない本だったのだ。
 およそひと言じゃまとまらず、頭がぐるぐるしてくる。あらためて読み返し、ネットも拾ってみたけど、ろくな書評がない。
 違う対談集で、ご本人が<僕のは、おばちゃんのしゃべくりで、いつのまにかダマされちゃうとよく言われる>と語っているのを見つけた。
 そう、話があちこち飛びすぎるんだ!
 
 理解力が低いことを<バカ>と呼んでいるのは世間と一緒。
 東京大学出の偉い学者さんに言われたらしょうがないと、うつむくことはない。養老さんは、それは誰にでもあてはまる当たり前のことだから、気にするなとも書いている!?
 この辺から、非常にわかりにくくなる(´ヘ`;)
frydogman
 ハエの世界には色がないそうだ。彼に<虹>の美しさを語っても通じない。(言葉が使えないって、ツッコミはやめてね)
 ハエ/犬/幼児/千差万別の社会に生きているいろんな大人。
 それぞれ情報の分野も質も量もまったく違う。<色を知覚できない>ほど極端な差がなくても、実際に体感してみなければ、それがどんなものなのか理解することができない――かどうかすら理解不能な現象は多い。説明――つまり言葉にできて、伝えられることなど、ほんの一部でしかない。
 そうそう。男の私は出産の困難さなど逆立ちしても理解不能。
 これが養老さんの言う「話せばわかるは大嘘」ってことだ。土台の情報が見えていなければ、その上に構築された世界は、いくら説明されても見えるもんじゃない。
 ご本人自体、ひとに語れるほどには、明確にわかっていないかったのかもしれない。知る人ぞ知る暗黙知? それは「俺の背中を見ろ」で、伝えられてきたもののひとつだろう。高僧や名人、かなりレベルが高い人々の間の話だろうけど。
 それこそ<教育>っていうものかもしれないけど、勝手に先を歩く養老さんの背中に意気を感じ、あちこち飛ぶ<しゃべくり>を言葉にまとめた新潮社編集部。エライ! オマケに儲かって、バンザイ!

 さて、この<バカ(理解困難)の壁>とは違う、もうひとつの<バカの壁>持ちがいる。一種の……と書いているが、ここで言い方を変えるべきだったろう。<壁>に対する姿勢が問題であり、それを養老さんは諸悪の根源と見ている。

 壁に背を向けた、いや壁などないと思い込んだバカ。世界はすべて了解済みと信じて、何も見ようとしない連中。
 理解困難ではなく、理解拒否! 
 頭の良い奴ほど、その壁は高い場合が多い。
 ……じゃなきゃ受験戦争に勝ち抜けない。
 ……素直じゃないとも言えるかな。
 
 テキスト文字<バカ>には、衝撃的パワーがある。ベストセラーになった一因でもあろうが、ここは違う言葉を用意すべきだった。
 <頭のいい奴ほどバカだ>
 これじゃ混乱するばかりだって(´ヘ`;)
 
 盛り上がったお二人の心にあったのは、結局このセリフだろう。
 受験戦争を勝ち抜いて、最高学府を見事に卒業し、上級国家試験を通ったエリート。その自負が、目を曇らせていやがる! 
 その昔、世界を動かすのは、新興日本。その日本を動かすのは陸軍。陸軍を指揮するのは、参謀本部。参謀本部の意思を左右するのは、作戦課であり、その中枢をになうのは俺。つまりは、当時のエリート集団、陸軍士官学校を主席で卒業した俺が世界を動かす! と、ボンクラ戦争を引き起こした奴同様、これ以上聞く耳を持たない<知ったかぶり>と<石頭>野郎どもめ! あ、女子もいるか? 現場を見ることもせず、上から指導するなんて、ファシズムそのものだ! 
 よほど、うらみ骨髄な感じ。
 閑話休題。
 養老「受動喫煙に科学的根拠はない」に対する日本禁煙学会の公開質問状の趣旨は<肺がんの主な原因が喫煙でない根拠、受動喫煙には害がないという根拠を示してほしい>なのだそうだ。
 大マヌケだ。
 激怒するのは自由だけど、逆の根拠を出せって言うようじゃ、自分たちにも、根拠がないと認めているようなものじゃないか。
 ……あるいは、本当にないのかもしれない。
 それでも大気汚染同様、ニコチンとタールが健康にいいとはおよそ思えない。お二人もそんな主張をしているわけじゃない。
『バカの壁』P24-29に以下記述がある。

<科学的事実>と<科学的推論>は別物です。(中略)この事実と推論を混同している人が多い。(中略)推測であって、真理ではない、ということが大切なのです。

 推論を信じきって疑わない。しかも、それを押し付ける!
 健康増進法の背景に、そんな<バカの壁(に背を向ける)>があるとみて、危険視しているのだろう。しかし続けて、こうも書いている。
別に「全てが不確かだ。だから何も信じるな」と言っているわけではない。

 対談では口にしていないが、こっちが本音のはずだ。
 因果関係が見えない以上、その相関性から推測するのが疫学。
 他に手がない場合に、確率の問題として、リスクを判断するための存在価値くらいはある。
 <バカの壁>持ちが、たくさんいる官庁の連中を、よっぽど嫌っているみたいだ。
 でもまあ、それにしても、やりすぎ(´ヘ`;) 
 ご自分たちには、そう先はないとのご判断かもしれないし、古き良き教養主義時代の遺物化している文芸春秋読者層も相当老齢化しているのだろう。でも40、50代のメタボオヤジたちだって、多数いるはず。彼らに免罪符を与えるようなこんな刺激は危険すぎる!
 ……編集者たちが拍手喝采したのかしら? 
 
 あ、だめ。もうこれ以上削れない。長文お疲れ様(´ヘ`;)

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