« 生活習慣改善へのまったく違う場所からの第一歩 | トップページ | 6月の結果報告 »

2006年6月26日 (月)

血糖値測定の歴史

 ほんのちょっぴりの血液(指の穴あけ、痛くない!)で、たった5秒(第2世代センサー)待つのだよ! もうすっかりラクチンなSMBG(血糖値測定)。ここに至るには、当然歴史がある。
 以下はクラブアークレイの医療関係従事者向けサイトにある解説<簡易血糖測定機の変遷>からの引用。
 第1世代:酵素比色法(ストリップ試験紙型)
        試験紙を目視することも可能。水洗いまたは拭き取りで
       反応を止める。操作者の手技による誤差が大きい。
 第2世代:酵素比色法(ノンワイプ試験紙型)
        水洗いや拭き取りの必要がない。
       操作者の手技による誤差が少ないタイプ 。
 第3世代:酵素電極法
        化学反応で発生する電流を捉える現在主流の方式
 第4世代:無侵襲方式
        採血不要。国内では未発売。
        近赤外線方式、細胞間液吸引方式などが開発途中。
 それ以前に、病棟での血糖測定の歴史がある。そのエビデンスがあってこそ、在宅での血糖測定が始まった。現在主流の電極方式の発売は、1991年。日本で開発されたようだ――それでも、測定結果が出るには、まだ1分間必要だった。
 古書(!)『糖尿病の解決』の著者、Dr.バーンスタインは、すでに遠い過去の存在と化しているようで、だれも知っている人を見つけられなかった。しかし、彼の活躍は本物のようだ。
 必要は発明の母。いずれ、ここまで進化しただろう。しかし、黎明期の彼の存在は時代を動かした。わかった範囲の事実を報告しよう。

06032100 37年前の1969年10月。小児発病のインスリン欠乏のせいで、死こそまぬがれてはいても、脚の壊疽の徴候も見えて、彼は合併症の恐怖におびえていた。
 当時蛋白尿が出たIDDM(1型糖尿病)患者の平均余命は、たった5年と言われていた。
 まだインターネットなどない時代。
 医療用測定機のエンジニアという職種柄とはいえ、専門誌で、泥酔した酔っ払いと糖尿病患者を区別する機械の広告にめぐり合ったこと自体が奇跡。
 医療器械は通常一般販売などされない。
 奥さんが医師だったので、購入できた――これもめぐり合わせ。小説だったら、都合よすぎるんじゃない? と言われそうな展開だ。尿糖ではダメ、血糖の安定化が必要と彼の意識にアンテナができていたことも重要。そうでなければ、不恰好で高額な開発されたばかりの(信用できるかどうかもわからない)機器を自己負担で入手したりはできない。
 毎日の血糖測定によって、摂取する食事と血糖値の関係をつかみ、彼はジェットコースター的血糖値の変動をどうにか制御できるようになった。
 1973年、彼は、その成果を機器メーカーとともに広めようとした。
 ――どうも、高血糖でのケトアシドーシス(ケトン性酸血症)より、低血糖でアドレナリンが出まくり、暴れまくるものだから、奥さんが頭にきたような節がある。
 自分の死の恐怖が原動力だったのか、奥さんへの恐怖愛のためだったのか? 行動原理は、人それぞれ。まさしく謎じゃ(´ヘ`;)
 
 先が見えれば、開発費(金!)も出てくるというもの。
 不具合だらけの機器を改良するために、第2世代の開発が、同時に進行する。そこに日本人が参加することになる。ゴールが見えてさえいれば、軽薄短小化は日本のお家芸!
 詳しく読みたい方は、Dr.バーンスタインのサイト、及び友人のサイト(同じ内容だけど、こっちの方が少しわかりやすい)で確認下さい。
 
 元日本糖尿病協会副理事長の池田義雄先生の血糖自己測定25年によれば、バーンスタインさんの問題意識同様に、尿糖での管理では、どうにもならかった様子がうかがえる。
 尿に糖がまじる段階は、血液中に糖があふれている状態。
 すでに本格的糖尿病であり、それまでの高血糖継続期間、および血圧次第で合併症はすでに始まっている場合が多い。
 おしっこが甘いと糖尿病――それじゃ手遅れなんだ! 紀元前から続いてきた常識が、ここで打ち破られる。
 まさしく夜明け前! 

Dexter の登場 このような中で、アメリカのマイルス社(エームス事業部)により dry chemistry system による簡易血糖測定法が開発された。ここで用いられた試験紙はデキストロスティックスと名づけられ、色調を測定する専用の分光輝度計としてエームス リフレクタンスメーターが考案された。かなり大型だったこの機器は1974年小型化され、Dexter(デキスター)として発売(13万8000円)され、これが簡易血糖測定を実用化させるに至った。

 開発した会社はインディアナ州にあった歴史ある会社だったようだ。バイエルに買収され、今は存在しない。
 手伝った日本の会社は、島津製作所(あの測定機業界の名門)の協力工場だった株式会社京都第一科学。2000年にアークレイ株式会社に社名変更。三和科学研究所から販売されているグルテストシリーズ、アベンティスから販売されているダイアメーターシリーズの製造会社だ。この歴史があるから、国内シェアが半分以上あるのだろう。
 ちなみに、センサーは四国の旧松下寿電子工業/パナソニック四国エレクトロニクスが生産。国内シェア65%。以前は、ビデオ機器の生産がメインだった。CD-ROM機器の生産も含めて、手間のかかる組立作業は全部中国へ移管されてしまったから、これは貴重な仕事だ。
 日経産業06/02/08の記事によれば、年間生産能力は22億枚。市場規模拡大(糖尿病患者が増えているってこと)にともない、今後数年間10%ずつ増産――おいしい仕事だなあ。世界シェア20%だそうなので、逆算すると、年間110億枚作られていることになる。全員IDDMで1日7回測定なら、430万人分相当――金のある先進国の患者ばっかり(´ヘ`;)かな。 
 池田先生によれば、1978年がSMBG(血糖自己測定)が認知された年だそうだ。欧州、イスラエル、そして日本も? 
 が、なぜかアメリカでは受け入れられなかったらしい。頭にきたバーンスタインさんは、自ら医師となって、血糖測定の意義を広めるべく1979年に学校へ行く羽目になる。

 実は、問題点は他にもあったようだ。
 さかえ5月号の巻頭エッセー『連帯の医療』で、中川北海道大学名誉教授が書いている。

 昔は、血糖測定自体が糖尿病臨床家の最大の悩みで(中略)変化の早い血糖を点としてしか測定できないので、全体の代謝異常の指標としてどの程度信頼してよいのか(後略)

 これは、以前エントリーした、ベテラン糖尿病患者のだましのテクニックでも明らかで、医師と患者の信頼関係を壊す元でもあった。
 食べれば高血糖、動けば低血糖。そんないい加減なデータで、合併症の進行予測なんてできるわけがない。ところが――
 偶然の研究から、ヘモグロビンA1Cの測定が臨床に導入されたことで、事情は一変しました。(中略)今まで知りえなかった全体の血糖値を知ることができるようになり、(中略)代謝コントロールの程度と、慢性合併症の発生頻度の相関に関する議論に終止符を打ちました。

 来た道を振りかえり、愚かな行為をあざ笑うのは簡単だ。
 地球が太陽を回っているのではなく、太陽が地球を回っている! 天動説をいまだに信じている人も、世の中には存在する。いろいろ理屈はあるけれど、そうした方を納得させようとしたら、最終的には、実際に宇宙空間で生活させなければなるまい。
 それでも地球は動いている。 
 1981-3年に、京都第一科学が、世界初のヘモグロビンA1cの測定装置を開発するまで、Dr.バーンスタインはドアを叩き続けたのだろう。お疲れ様(´ヘ`;)
Joslin 中川先生の<偶然の研究>が、何をさしているのか調べがつかなかった。
 ジョスリン糖尿病学1993年版第36章『代謝コントロールと慢性合併症との関連』でも、明確な説明はない。
 むしろ、ベーコンの言葉を引用して、安易に結論に飛びつくことを戒めている。――ただし1450年と書いてあるが引用元不明。ロジャー・ベーコンが言いそうな言葉だけど、彼は1294年に死んでいる。
人はみかけの上で正しく見えるものを信じやすい
 末梢神経障害(網膜症や腎臓障害)と大血管障害(脳梗塞、心筋梗塞)とは、発病条件が違うようだ。高血糖イコール合併症と、大声で叫ぶには、まだまだ謎が多い。ことはそう単純ではないのだ。
 実験動物(イヌさん)による検討において、血糖コントロール結果が有効性を示さず、むしろ低血糖症での死亡例が多発したことをとらえ、逆に治療リスクを懸念したりしている。 
 今、生きている私としては、学者の寝言を信じて何もしないわけにはいかない。しかし、だからといって、QOL(生活の質)を崩してまで、血糖値におびえるのも愚かな話だ。
 他にやることは山ほどある! アホくさ。
■07/06/21追記■
 なんと糖尿病ネットワーク糖尿病医療の歩みとして、後藤日本糖尿病協会元理事長のサイトに、日本側からみた記述があった。
 もっと早く見つければ苦労せずに済んだのに……。

|

« 生活習慣改善へのまったく違う場所からの第一歩 | トップページ | 6月の結果報告 »

コメント

YCATさま、こんばんは。
 今日のエントリも大変興味深く読ませていただきました。先週から自己血糖値測定をはじめた身としては、先人の努力や開発の賜物の測定器を感謝しつつ使ってコントロールに努めたいと思いました。

投稿: なる | 2006年6月27日 (火) 02:22

なる様
 おはようございます。
 月末のヘモグロビンA1Cデータを見てから、なるさんについては、別途メールします。なんだか旦那さん専用になりそうで、変な気持ちです。昨日の診察結果を楽しみにしています。結局、本人が始めないとどうにもならないのが血糖管理です。聞く気がなければ、どんなにきゃんきゃん騒いでも、聞こえない場合が多いです。じっくりいくしかありません。
 ……血糖自己測定ができるから、ぎりぎりまで食べられるようになったわけです。やっぱり科学の進歩ってのはありがたいものです。

投稿: (管) | 2006年6月28日 (水) 06:19

YCATさま。
 今日は診察日で検査の結果も聞いて参りました。
 HbA1cは5,7でした! 4月が6,6でしたので改善できて嬉しいです。いつも自分では気付かない事までアドバイスしてくださるYCATさんのおかげです。有難うございます。しかし、維持するのは大変な事も承知です・・・でも、頑張りますよ~
 小心者なわたしは、お祝いにケーキの1個も買って帰ろうかと思ったのですが・・・勇気が出ませんでした(涙)

投稿: なる | 2006年6月29日 (木) 19:40

なる様
 こんばんは。
 皮下脂肪の関係があるので、女性の適正体重は難しいです。ペシャンコでよければ、男性並みのBMIでいいのですが、そうもいきません。今の数字から動かない理由が、食事量の計算ミスでないなら、代謝量と見合っていることになります。
 拝見した血糖値から推測すると、ヘモグロビンA1Cはまだ高い感じです。このデータは6月初旬のものですよね? 今の血糖値が反映されると、5を切るかもしれません。患者さんのための根拠に基づいた糖尿病の話を参照下さい。ちなみに指の全血血糖値は、腕の静脈血糖値の10%程度アップになります。
 私のコメントどうこうではなく、食事制限の効果で体重が減って、インスリン抵抗性がなくなり、通常の人並みになっているものと推測します。ブドウ糖負荷試験を受けてみることをお勧めします。
(できれば5時間負荷試験?――異常な食欲の原因は、低血糖のせいかもしれません。その前に自己測定してみる手はあります。50とかにならなければ不要です。逆にそのようなことがあれば、アドレナリンの分泌で痺れに関係するような気がするのです。主治医の方は、溝口先生によれば、否定するでしょうが)
 ただ5.7ってのは微妙な数値ですね。無茶なダイエット提案ができなくなっちゃったなあ(´ヘ`;)
 ケーキの二個や三個はもう大丈夫だと思います。そのための血糖測定器です。どこまで食べたら食後2時間値が200を越えるか実験する意義はあります――違うだろうって? 
 旦那さんに内緒で実験する手もあるけど、ここ数ヶ月は一緒に我慢してあげないと可哀想かも。

投稿: (管) | 2006年6月30日 (金) 02:07

YCATさま、こんばんは。
 HbA1cは6月15日の数値です。
 思い起こせばちょうど2年前に体調を崩した時に受けた血液検査でA1cは5,8で医師にギリギリですねと言われた事を思い出しました。その時からきっと糖尿は徐々に進行していたのでしょうね。
 低血糖と異常な食欲をはじめとする精神症状についても考えさせられました(リンク先を読んで)。一度、ブドウ糖負荷試験を受けてみた方が良さそうな気がします。まあ、ストレス状態がしばらく続く予定なのでその分を加味して、血糖値や食欲等の因果関係を探ってみなければダメなようです。
 ケーキ、明日あたり食べてしまうかも・・・です。

投稿: なる | 2006年7月 1日 (土) 00:24

なる様、こんばんは。
 ブドウ糖負荷試験の代用には、ケーキより、カーボ満載の和菓子が効果的です。
 ……虎屋の羊羹を丸ごと一本食べたい(´ヘ`;)
 100gで糖質75g相当です。
 半分(糖質245g)食べても大丈夫そうな気がします。渋茶があっても、そんなに食べられないでしょうね、普通の人は。

投稿: (管) | 2006年7月 2日 (日) 02:25

YCATさん!
ボマー先生紹介して頂きありがとうございました!先生曰く、やはりスポーツによる一時的高血糖は問題ないとのことで、安心しました!

因みに上のコメントの「食物繊維はとんでもない量じゃない限り吸収遅延の役にはたちません。油の方がいいようです。……食後動くのが一番ですね」
食物繊維でなく油とは具体的に、「亜麻仁油とかを摂取した方が良い」とか言う意味でしょうか?
度々質問して申し訳ありませんが。

投稿: 雄三 | 2006年7月13日 (木) 14:33

雄三様
 コメントが違う場所についていましたので、7/3付エントリーの方にコピーしてレスさせていただきました。

投稿: (管) | 2006年7月14日 (金) 02:50

YCATさん、こんにちわ!
 「十割そば」懲りず性懲りず、昨日は冷やし中華150g(ゴマだれ)に挑戦しました、勿論、ランチビール付きで、しかも完食せずに少し残しました。
 食後はシナモンや沢山のサプリを摂取して自宅の周りを40分間高速歩行して、仕上げ、ネットサーフィンしながら40分のEMS電気腹筋強化マシン使用、そして食後2時間は「247」ショックでした、もしかして運動し過ぎて「血糖値効果作用のある有酸素運動」→「血糖上昇の無酸素運動」になってるのでしょうか?
 改めてM田主治医に聞いてみますが・・・
 とにかく、マズイと思い急遽近所のプールで一時間ぐらい泳いで再度計測すると「86」でした、全く血糖値に振り回されて、一喜一憂はいけないと分ってるのですが。
 因みに今日は昼食会議後→ボクシング→食後3時間血糖値は「147」なんか良く分かりません(苦笑)

投稿: 雄三 | 2006年7月24日 (月) 15:45

雄三さん
 前回コメントにレスしたように、歩行後の血糖測定をやってみてください。
 歩行と筋トレはまったく違うものだと思いますよ。だから<スポーツ選手の一時高血糖>になるわけですから。運動の質と量、それに対する血糖値は主治医の方にも参考になるはずです。激しい無酸素運動のデータはあまり存在しないのです。
 ところで、話の続きは同じエントリーにつけてくださいな。他の方にも有効なレスの応酬です。読んでもらわないともったいないです。

投稿: (管) | 2006年7月24日 (月) 16:01

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/95944/10681306

この記事へのトラックバック一覧です: 血糖値測定の歴史:

« 生活習慣改善へのまったく違う場所からの第一歩 | トップページ | 6月の結果報告 »