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2006年5月 6日 (土)

存在価値

『糖尿病の解決』――正常血糖値を得るための完全ガイド。
 ――その内容紹介
 訳された方は、長野県千曲市千曲中央病院で透析部長をなさりつつ、糖尿病外来を担当されているらしい。専門は小児心臓外科。
 糖代謝異常は、それぞれの差異があまりにありすぎる。教科書的分類では、臨床現場が対応できないのは、わかるような気がする。そうした観点からみれば、この本は貴重な実践治療記録であろう。
 宗教的、希望的観測中心の本は、山ほどあるが、肝心な詳細記述がないから役に立たない。
 信じるか信じないか! それでは患者本人が選ぶしかない。
 おおむね眉唾品が多いし……。
 必要なのは解説書ではなく、症例集だろう。
 糖代謝異常は、千差万別だ。アフリカ大陸を線引きして、国境を決めるような教科書が役に立つはずがない。
 もちろんある程度の傾向はある。グループ化して、そこから検索できるようなデータベース。作れないことは、ないはず――実は絶望的観測(´ヘ`;)をしているんだけど、これって教育問題と同じかもね。

 細かいので、いちいち付き合うとすっごく長くなってしまいます。ひとまず、ざっと書きます。

第1部は、糖尿病の基礎知識についての記述。

3-器具一式及び入手方法
  これは約10年前のアメリカで生活する際の方法。
5-血糖値の記録:グルコグラフデータシート
  これは、大阪市立大学小児科推奨血糖表の元祖みたいなもの。
  37年前、Dr.バーンスタインも、これを策定することで、
  血糖値を安定させる道を見つけた。
  そうか、37年も昔(!)になるんだ。
 
第2部は、食事、運動、薬物他治療全般について。

9-12が食事療法で、言ってみればダイエットと同じ。
  基本は、炭水化物制限ダイエット。
  その根本思想は、第1部7章小さな数(または量)の法則から
  発生している。化学システムは、大量に投入すると予想外の
  変動が起きる場合がある。
  だからコントロールするには、少量に限る! というわけだ。
  特に、インスリンの大量使用を恐れており、
  それがゆえのカーボ制限となる。
  アトキンスダイエットのように、蛋白質脂肪は食べ放題などとは
  言わない。アルコールも同様。
  従って、一般受けするわけがない。
  合併症の恐怖におびえる特定層には、受け入れられるかな。
13-悲しいことに、この章は食事制限のための薬物使用法と
  自己催眠のテクニック解説……。
06050400 私の左手は、痺れに気がついて、すでに5年経つ。
 痛みは感じるし、温感冷感もある。キーボードのAをたまに打ちそこねるくらいで、特段の支障はない。
 ……その程度でも事実を持った人以外、受け入れられないだろうなあ。
 血糖管理は、食事量の管理があって初めて成立する
 やりたくないのが普通だから、
 なにか必死になれる材料がないと、
  実行できる人は少ない。 
16-は、使用済み注射器の始末にまで言及……って、
  おいおい、そのままゴミ箱に捨てるの?
  10年前の本だからしょうがないが、そもそもこんな注射器
  アメリカでは、まだ使っているのかな? 
  もちろん今の日本では、意味がない。
18/19章は、インスリン使用シナリオの検討だが……。
  本当にもう実に涙ぐましい。
  インスリン量の削減が大目標とはいえ、ここまでくるともう大変。
  1単位ではなく、薄めて使うテクニック……。
  少量で効果を出すために、筋肉に直接注射する……。
  これについていける患者がどの程度いる、いたんだろうか? 
22-胃不全麻痺――これは、国内では見たことがない情報。
  どの程度合併症が進展するとこうした状態となるのか?
  迷走神経障害関連として、ありそうな気はするが、
  よくわからない。つまり、食べたはいいが、胃で滞留する
  障害があるので、インスリン量のコントロールが困難になる!
  そういう症例。

(6/10追記)河合雅幸さんのサイト
2005/6/15付糖尿病ソリューションに記事発見
なぜだ?どうする! 説明がつかない食後2時間の「低血糖」

 アメリカ糖尿病協会のデータでは、1型歴20年以上では40~50%の人、2型歴の長い人の30~40%に胃麻痺がみられるそうです

  付録Cのフットケアへの注意といい、高血糖により、ターニング
  ポイントを越えてしまうと、生活習慣の注意点、チェック項目が
  どっと増えてしまう。その証明のような文章が多い。

 ……と、走り書きですが、いかがでしょう? 
 すでにお気づきの通り、今となっては、この本を買って読んでも実用的には役に立たない! 
 圧巻は、付録B(´ヘ`;)
 糖質制限ダイエットを実行している場合、病院側に、提供食に注意しろと要求するためのひな形。
 さすが訴訟社会アメリカ!  
 日本の患者で、ここまで対決できる人って……村八分されるね。
 それでも歴史に学ぶものはある。まだカロリー管理主体で、10年遅れている日本の状況を思えば、ところどころ拾って、続きを書く価値はあるかもしれない。 

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