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2006年2月23日 (木)

『懲りない患者――快適習慣の落し穴』

06022301 東京都教職員互助会三楽病院の田上副院長が、糖尿病ベースの様々な患者さんの実例を、整理、統合して、読みやすくまとめた本です。
 気になる人は、参照して自省しましょう。
 家族の方は、読んだら頭に入れておいて、本人がその気になるまで絶対口に出さないこと
 中途半端な意見は、逆効果。
 悪化の原因にもなります。
 
 とはいえ、あんまりだ。なんだい、この患者たちは(´ヘ`;)
 なりは立派な大人でも、この管理能力の欠如は、ほとんど小学生並――いやいや、そんなことを言うと学級委員の女の子に怒られる。
 そういう人に限って、どうせ他人の話は聞かない。
 言っても、書いても無駄なんだけど……。

 同じ病院で継続勤務ということは、あまりないらしい。
 田上先生は、その分同じ患者さんを長期にわたって見ることができた。生活習慣病――そうそう昔は、成人病って言ってたんだっけ――を扱うには、ホームドクターのような位置であり、糖尿病の罹病者の増加や、治療パターンの推移を知るには、もっともふさわしい方のおひとりなのだろう。
 それだけに、長年に渡る無力感に侵されているのか、疲労感(あるいは徒労感)が本全体に漂っている。
 昔の糖尿病治療は、暗く重たいものだった。新しい時代の治療を受けることができた私の目には、その愚鈍な構造がありありと見える。情報不足で、旧式管理がいまだに残っている以上、「糖尿病」と後ろ指を差す、無知で半可通な原住民たちがたくさんいて、余計なおせっかいをしてもまったく不思議はない。

 なにごとにも、光と影はつきもの。
 巻末には、先生の心も軽やかになっている。歩みは遅くとも、時代は変わるのだ。その前に、問題点は洗い出さねばならない。

 自覚症状がないのが生活習慣からくる病気の特徴。だから、検査で発見されない限りバランスが崩れていることを認識しない。それはわかる。しかし、やがてやってくる危機――合併症の姿をしりつつ軽視する人々とは、どういう方たちなんだろう? 
 QOL最優先で、覚悟の上のリスク負担! 
 それはありえる。肉親でもなく、愛情で結ばれているわけでもない、たかが医師(他人)に人生をああだ、こうだ言われる筋合いはない。 

病気と密接な関連がある「生活習慣」を変えようというインセンティブ(注/刺激)が働かない。なぜインセンティブが働かないのか、理由は明白である。「生活習慣」は大部分が「快適習慣」、変えられないのではなくて変えたくないからである
 残念ながら、田上先生の言ってることはどうしようもない真理だ。
 だからこそ、2千年以上昔、モーゼは十戒を掲げて、民衆を怒鳴りつけたんだし、釈迦も悩みぬいた。ホモ・サピエンスはそこから一歩も進んではいない。
 
 本質の議論ではなく、方法論上の問題点も多い。
 健康診断データの取り扱いを含めて、血の通っていない――言ったよ! だけの政策。散々望まれていながら、いまだに確立されないホームドクター制度などなど。
 そんな状態であれば、厚生労働省の書類仕事「健康日本21」が、当初目標に近づくどころか、スタート時点より悪化している項目が多いのは当然だ。
 (2/3付朝日新聞の記事――20-60歳代男性の肥満率 目標値15%以下 2000策定時24.3%、2003暫定値29.5%)
「せめて歯止めを」とつぶやきつつ、首をふるふると振るお姿が目に浮かぶ。絶望的だ。
 
 この本が<脅し>の効果を発揮してくれれば、それはそれで喜ばしい。読んだ方は――そもそも読む気がある方は、たぶんちゃんと管理する意識をもつだろう。
 そうじゃない人は――やっぱり視界に赤いものが見える(網膜出血)か、脚が腐りだすか、あるいは腎臓が二つとも壊れるか、脳梗塞で意識を失うか、心筋梗塞でギューツときつい思いをするまでは、なにもしないだろうなあ(´ヘ`;)
 整形外科を訪ねる方にも血糖管理不全由来の方が多いらしい。
「50肩? 高血糖だよ!」
 
 それでも「救える人は全部救うよ!」
 ひょうひょうと日々の診察を繰り返す――内科医って大変な仕事だ。江戸時代、本道医と言われたわけだ。
 
■希望の光■1■超速効型インスリン登場。
 2002年に登場したこれが、食事管理に革命をもたらした。それで救われた人の例が書かれている。私もそのひとりだ。
 正確なデータはないが、2型患者の10人に3人程度は、糖毒性の解除からインスリン離脱へ進むらしい。
 それ以前の速効型では、食前30分前に打たねばならず、うまくバランスが取れない。無駄な高血糖、過激な低血糖を起こしがちなので、医師も患者も導入にちゅうちょせざるを得なかったようだ。
■希望の光■2■チーム医療。
 尿に糖がまじるような悪化した状態は、肉眼で見えるレベルの科学であって、だから2000年以上昔の人が「糖尿病」と名づけた。顕微鏡レベルで、血糖をどのように管理するか、それが現代医学の関心――患者側としては、食事管理が基本中の基本となる。
(電子顕微鏡レベルの分子栄養学は興味深いが、また別途)
 摂取する(入力)食品の成分分析の不備。なにより、焼いたり煮たり、水分の有無でデータはまったく変わってしまうが、雑食動物の我々はバラバラには食べられない。
P56 数年前だが、入院経験のある男性患者にアンケート調査をした。「もう一度食事指導を受けたいですか」という質問に対する答えは、ほとんどが”NO”だった。
 血糖管理補助役のインスリンの機能向上は救いだが、やっぱりここが一番の問題点。ここがあいまいだからこそ、うざったい教育的指導なんてものがあるし、治療側と患者側の疑心暗鬼が発生して、半可通の乱入や民間療法の妖術がはびこる。だからこそ「快適習慣」も、そう簡単には変えられない。
 アンチエイジング医学の青木先生のブログにもある。
「先生、先生も病院の勤務がオフになったら、外で旨いもの食べて、酒も飲むんでしょう。今まで俺も結構真面目に苦労してきたんだよ。これからの人生、好きなもの食べて、酒くらい飲んで少しは楽しくやりたいんだよ。俺の人生、好きに選ばせてくれないか。」と言われてしまいました。これには愕然としました。
 きめ細かい治療といったところで、一人の医師ができることは多寡が知れている。CDEのエントリーにも書いたが、患者からの窓口が多彩であることで、生活習慣の改善につながる例は多い。生活全部の管理が必要だからだが、単に角度を変えることだけでも多面的治療になっていると私は思う。
 それで何人救えるのか? できるだけ多く! 
 ――ま、そのほんのちょっとした一部になればってのが、このブログの存在理由なんだけど、ううううむ。あまりに特殊ケースを狙いすぎているかもね。文章も長すぎるし――すいません。

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