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2005年12月26日 (月)

『医学は科学ではない』

 なんとも刺激的タイトルですこと(´ヘ`;)
 神経内科がご専門で、脳に絡んだ著作がたくさんあるようだ。小説も書いていらっしゃるし、ネットから受ける印象は著述業。
 05122600 毎週月曜日に掲載されている『B級グルメ健康法のススメ』
 本日分のお題は<串揚げ>。ちょっとがっくりする内容だが、掲載紙が日刊ゲンダイじゃあどうにもならないかも。
 いわんとすることは理解できる。
 医師及び医学は万能ではない。
 その点を踏まえて、可能な限りの医療行為で患者に対応する――それは誠実さの証明であるともいえる。
 正論! 
 以下は、章ごとのタイトル。()内は、小見出しの一例
1-統計学が医学なのか
 (結果がゆがめられる大規模調査)
2-医学は芸術であった
 (腕のいい医者が存在することが科学でないことの証明)
3-医者は科学的根拠で治療しているか
 (あいまいな治療根拠)
4-人間的だからこそ科学ではない
 (教授の判断で研究が変わる)
5-医療を科学と誤解する人たち
 (病気の原因を求める患者)
6-患者は医療に何を求めるのか
 (ブランドに頼る患者)
7-健康食品と代替医療
 (代替医療を嫌いながら信じる医者)
8-医学をどう考えるべきか
 (医学は幻想のルールだ)

臨床の現場では、意外にも、医者の経験に基づく判断やいわゆる勘で治療が決められたりしている。EBM(実証に基づく医療)によって治療や診断が行われているのは、医療行為の半分にも満たない。
Evidenceエビデンス実証Based Medicineメディシン医療

 いきなりそんなことを言われても、患者は困っちゃうよねえ。何を信じていいかわからなくなる。生命現象が複雑怪奇であって、一朝一夕で誰もが全部見える代物じゃないってことくらい、誰でもわかってらぁ。だけど原因があって現象が起こるわけなんだから、なにがしかの根拠を求めるのが当然。

 宝くじよりも、競馬。競馬よりも株式投資。非科学的の典型であるギャンブルだって、なにかの引っ掛かりがなければ、こわくって参加できない。問題提起はけっこうだが、ただでさえマスコミに混乱させられて代替医療やサプリメントへ走りがちな羊たちを戸惑わせるだけだろう。どこにも根拠がないとなれば、声の大きい奴に従う。それがヒト科ヒト属の習性ってものだ。

科学的根拠に乏しい健康情報に振り回されるいっぽうで、医療不信が広がっている。

『医者に遠慮する患者は長生きできない』で中原英臣先生も似たようなことを言っている。
病気を発症する原理を知っていれば応用がきく

 これが唯一の打開策だろう。医療の科学的根拠の不足に悩む医師の方々を救うため、なによりも自分たち自身のために、患者側があなた任せではいけない。
 記事でも書いたように<任せて安心勝手にやって>になっているぞ! と米山さんも言っているわけだ。
我々は糖尿病の情報を提供することが主な仕事で、コーディネート役であり、援助者であると思っています。皆さんのQOLが維持できるように正しい情報が提供できるように、結果として良い人生になれますように自己管理を方向付けることが出来ればと思います。私を含めて多くの専門医が「一方通行の医療」には限界を感じています。上手に医師を利用!していただきたいと思っています。

 米山医師の苦衷も、この代謝先生。のコメントとたぶん同じ。

 単純な外科的病状や、原因が見えている感染症などと違って、生活習慣病は、悪化への道が複雑でありすぎる。碁盤の目のように行き先が見えることは――当分ありえないだろう。約1年近くいろいろ書き続けてきたように、それでも糖尿病はだいぶ明るい陽射しが差してきた。そう言って良いと思っている。なにせ、血糖値一発! で結果が見える。食べすぎ、特に炭水化物はてきめんだもんね。

 高血糖を放置すれば、ヘモグロビンA1Cが高くなり、ディープインパクト(競馬で、超速い馬)並みの高確率で合併症になるデータも、ほぼ認められている。
 やっぱり数字がもっとも雄弁。
 教育的指導で「あれダメ、これダメ」言ったって、聞きたくない人の耳には届かない。高血糖時、実は不快感があるはずだが、その感覚を数字で見せれば、より身にしみるはず。無知なあいだは、ちょっとくらくらするから横になる程度の対応しか、やりゃあしない。
 そのくらくらこそ合併症への道。悪夢のような写真を見たら、一気に恐怖感も増大する――脅しちゃいけない?
 米山さんの言うように、これはまだ完璧なエビデンスではない。大本命ディープインパクトが負けることもある――超高血糖だって、合併症にならない人もいないわけではない――条件があるけど。

 P47で生物学者E・O・ウィルソンを引用して科学の定義をしている。

1-実験を再現し、検証することができる
2-それによって以前より万物の予測がたつようになる

 再現性は、確かに難しいのが現状だろう。医術(アート)と呼ばれたギリシャ医学と比較して、現代医学が科学と呼べるか? この設問は少々厳しすぎる。古代の呪術はもちろん医術より、たとえ微速であろうとも前へ進んでいる。道は照らされつつある。
 それを信じなければ! 
 当てにならぬと疑おうと、それを根拠に実験し、結果を検討する。それ以外に道はないと私は思う。それこそが<科学的態度>と言うべきものだろう。
 患者さんのための根拠に基づいた糖尿病の話の管理人さんが言っているのも同じ意味だろう。医師もまた科学者の一員であるはずなんだもん。
根拠があるのにそれを知らなかったり、自分のやり方と異なるといった理由で目を向けなかったりすることです。これは、医師としてのプロフェッショナリズムに欠けた行為だと思います。

 ま、大人の事情もいろいろあるんだろうけどなあ……。あるいは、単に厚生行政というマクロな視点と、ミクロな個人ごとの健康管理への姿勢をごっちゃにしているだけの話かもしれない。
 いずれにしてもがんばって米山先生!
 実はこの本、そこそこ売れているらしい(目出度い)――そしてたぶん何も変わらないだろう。それが予想されるからこそ、心ある方々の発言が続くことになるのだ。
 ブレイク・スルーはどこにある? 

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» 【医学は科学ではない 米山公啓著 ちくま新書】に意見する [三余亭]
聖マリアンヌ医科大学第2内科助教授であった神経内科医による著作。現在はもう大学からは離れられており、小説やエッセイで有名な方のようです(すいません。読んだことありません。)。医学は科学ではないという主張がされている本ですが、ちょっと引っかかるところも多く、いつもより内容を細かく検討したいと思います。特に第2章までの内容を詳しく。かなり長くなりますが、お許しください。googleで検索して、この新書について書かれているブログ(情報だけの治療室、少しだけ素敵な妄想、血糖を管理する日々、ペペ、s...... [続きを読む]

受信: 2006年2月 9日 (木) 22:56

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